――「子どもは完璧なママより機嫌がいいママを求めている」。すごく素敵な、力をもらえる言葉です。

「実際、子どもたちって『うちのお母さんはすぐ怒るよ』とはよく言うんですけど、たとえば『うちのお母さんは家事を手抜きするんだよ』って言う子はほぼいないんです。

実はそのあたりは、子どもさんが大きくなればいくらでも取り返せます。でも、子どもをきちんと見てあげる、ほめてあげるという部分は取り返すことができないんですね。

家事は手抜きできても、育児の手抜きはかならずあとでツケが回ってくるので」

――いつか必ず“借金”の取り立てがあると。

「そう。育児は“借金の取り立て”が必ずあるんです!

この取り立ては、中学生くらいで必ず来ますよ。だから私は『できるときに、できることを、できるだけやるといいですよ』ってお伝えしているんです。

悩んでいる方ってもともと頑張っている方なので、頑張りすぎると『もう無理』となってしまう。だから、頑張るのではなく『できるときに、できることを、できるだけ』でいいんです」

育児は“トライアスロン”!?

――そうはいっても、やはり日常、子どものことや家のことを優先してしまいがちです。

「“子育てトライアスロン”なんてよく言うんですけど、育児は24時間365日ずっと続くんです。休みがないんですよ。でも、人ってきちんと休みを取らないとメンタルヘルスに影響が出ます。

怒りっぽい人はイライラするし、不安になりやすい人は不安になる。ちょっとしたことで不安になったり人をねたんだり、その人の持っているネガティブな部分、黒い部分がすごく露出してくるんです。

日々のバタバタの中でいかに自分の時間を確保して、自分のための時間、私はよく“ご自愛”と言っているんですけど、その時間をいかにして捻出するかが大事ですよ、とお伝えしたいですね」

育児は大変だし、楽しくないこともたくさん。そんなネガティブな気持ちを持つこと自体を否定する必要はない、と東先生は言います。

だから、そんな自分も肯定して、楽に子育てできる場所の確保と“自分よしよし”でエネルギーをチャージ。そしてなにより、完璧を目指して頑張りすぎるより、心に「できるときに、できることを、できるだけ」の余裕を持ちたいですよね。

子どもが求めているのは、“完璧なママ”より“機嫌のいいママ”なんですから!

【取材協力】東ちひろ先生

幼稚園講師、小学校教諭、中学校相談員、教育委員会勤務を経て、現在は一般社団法人.子育て心理学.協会代表理事。上級教育カウンセラー、日本カウンセリング学会認定カウンセラー。著書に『子育てが上手くいく!ママのココロ貯金のすすめ 親と子の自己肯定感を上げる33のポイント』(メイツ出版)ほか。
公式サイト 一般社団法人.子育て心理学.協会

ライター。業界紙、エンタメ系雑誌記者を経て、現在フリーランス。日々の暮らしに「へぇ〜」のアクセントを提供したいと日々勉強中。関心あるテーマは教育、お金、哲学。好きな本のジャンルは児童書・YAで、特技は物語の世界に入りこむこと。