“すぐ切れるカード”をたくさん持っておく

――では、モヤモヤが溜まってつらくなったら、どうしたらいいでしょうか。

「モヤモヤが溜まるとストレスになって、やがて爆発してしまいます。ストレスを小出しにする一番手っ取り早い方法はやはり、少しでもいいから自分の時間を確保すること。

パートナーや身内に頼めるなら預かってもらって、難しい場合は子どもを連れてでも、自分の時間を作ることをおすすめしています」

――子どもを連れて行ってもストレス解消になりますか?

「もちろん誰かに見てもらえるなら、それがベストです。ですが、そうなると相手の都合もありますし、きょうは誰にも預けられないから…と我慢するよりは、お子さんを気がねなく遊ばせられる場所をたくさん確保したほうがいいです。

たとえば、エアコンがきいたショッピングセンターとかショッピングモールにあるキッズスペースのような、親が疲れずに子育てできる場所の候補を使わなくてもいいからたくさん持っておく、お食事なんかも子どもと一緒に気兼ねなく行ける場所の情報を一つでも多く知っておくというのは、現実的に少しでも楽な育児をするためには必要かなと思います」

――すぐ切れるカードをたくさん持っておく、それだけでも気が楽になりますね。そして、ストレスをためすぎず少しずつ放出する、というのがやっぱり重要ですよね。

「そうです。ストレスはゴミと一緒で日々溜まっていくものなので、たまりすぎないように。ためすぎると捨てるのも大変だし、その溜まったものは結局、一番身近な子どもに向きます。

子どもさんのちょっとした失敗やわがままが許せなかったり、そこまで言わなくてもっていうくらい怒ってしまう場合は、お母さんのストレスが影響していたりするんです」

“自分よしよし”でエネルギーをチャージ!!

――もう一つ、東先生はご著書や講座のなかでたびたび「自分で自分をほめる」ということの重要性を指摘されています。「自分で自分をほめる」ことの効果について、教えてください。

「育児ってひとえに“人のために何かをする”という作業で、ものすごくエネルギーを必要とします。ほめられるというのはそのエネルギー源になるんです。

でも、育児は家事以上に“やって当たり前”と思われる傾向がありますよね。

『よくやっているね』『ありがとう』って誰かが言ってくれると一番いいんだけれど、言ってくれないなら自分で『私って本当によくやってる』とか『頑張ってるよね』っていっぱい言って、“自分よしよし”を積極的にやってほしいと思うんです」

――「自分に“ご褒美”を買う」っていうのはありますよね。言葉だけでも効果はあるんですか?

「“自分よしよし”のいいところは、毎日できるところです。ご褒美を毎日買うことはなかなか難しいですが、自分で自分をほめることは常日頃やろうと思えばいつでもできますよね。

毎日当たり前にやっていること、たとえば『今日もゴミ出しして偉いな』とか『洗濯機2回も回して、頑張った!』とか、そういう小さな頑張りを見つけて“自分よしよし”していく。


実は、こういう“当たり前をほめる”というのは育児にも通じるところがあると思うんです」

“完璧なママ”より“機嫌のいいママ”に

――たしかに「子どもをたくさんほめましょう」とはよく聞くフレーズですが、実際どういうときにほめたらいいのかって難しいです。

「そうですね。だから、“当たり前をほめる”がいいんです。当たり前のことほど、声を掛けていかないとやらなくなるもの。歯磨きでも何でも、毎日やっていることを当たり前と思わず、ちゃんと声をかけましょうとお伝えしています。

子どもって実は“~するべき”という感覚は少なくて、『お母さんがほめてくれる、見てくれる』というのが原動力になったりするんです。だから、ほめると言っても難しく考えず、目に見えたことをそのまま言うのでOKです。

『お着替えができたね』とか、最後までできなくても『お着替え頑張ったね』っていうプロセスでもいいので」

――そのためにも、ママが気持ちに余裕を持つことが大切なんですね。

「そうなんです。お母さんが頑張りすぎていて心に余裕がないと、子どもに優しくできないですよね。でも実は、子どもって別に完璧なお母さんが欲しいわけじゃなくて、機嫌がいいお母さんを求めているんです」