チームの一体感が伝わってきた印象的な場面
チームの一体感が伝わってきたシーンがある。横浜一筋15年のベテラン、石川雄洋が8月4日の巨人戦でプロ通算1000安打を達成。
その試合後に、チームメイトとファン、スタジアム中が一体となって、記録達成を祝福したシーンだ。そんなアットホームなチームに対して、石川は「今のチームにもう1回18歳になって入りたい」と笑顔を見せた。
少し前のベイスターズは主力選手のFA移籍も当たり前で、「横浜を出る喜び」などと揶揄されることもあったが、今は違う。選手が「ここでプレーしたい」と思うチームになったのだ。
勝負の世界である以上、結果は大事。選手にもファンにも愛されるチームとなったベイスターズが次に目指すのは、1998年以来のリーグ制覇、日本一だ。FA権を行使せず、チームに残留した伊藤光はこう語っている。
「これからのベイスターズは優勝争いが当たり前のチームになっていかなければいけない。2019年はそのきっかけとなるシーズンになったと思います」
常に優勝争いをしていくチームへ。もしかしたら2019年はのちに「ターニングポイントだった」と呼ばれる1年になるかもしれない。
将来の中軸候補と呼ばれる伊藤裕希也と細川誠也、投手陣では上茶谷大河や櫻井周斗といった若い選手たちが、シーズン終盤の優勝争いを1軍で体感した。
こうした経験は、2020年以降のシーズンに確実に生きてくることだろう。
ラミレス監督以下、コーチ陣、主力から若手選手まで、総勢16名のインタビューを収録した「プロ野球ぴあ」
ラミレス監督以下、コーチ陣、主力選手から若手選手まで、総勢16名のインタビューを収録した「プロ野球ぴあ YOKOHAMA DeNA BAYSTARS 2019 メモリアルBOOK」の取材は、実はシーズンが終盤にさしかかり、優勝争い、CS争い真っただ中という時期におこなわれた。
シビアな試合が続く時期に監督、コーチや主力選手たちの取材となれば、いろいろと障害もありそうなものだが、取材は実にスムーズなものだった。
その背景にあるのも、チームの一体感だ。
スタッフと監督、コーチ、選手たちのコミュニケーションがしっかりと取れているから、緊張感漂うシビアな試合の前でも、選手たちは非常に穏やかで、取材はとてもいい雰囲気のなかおこなうことができたのだ。
こうした取材のなかでも、今のベイスターズが良いチームであることが感じられた。
言ってみれば本書は、ベイスターズと制作スタッフが一丸となってつくり上げた一冊なのだ。
2019年シーズンの一体感、そして2020年以降の未来への期待をこの一冊から感じてほしい。