ベイスターズの道のりは決して平坦なものではなかった
2019年の横浜DeNAベイスターズをひと言で表すとしたら、一番しっくりくるのがこの言葉だろう。
監督、コーチ、選手、スタッフが一丸となって戦い、日本一に輝いた1998年以降では最高となるシーズン2位、球団史上初めてのクライマックスシリーズ(CS)本拠地開催を決め、観客動員記録を更新した。
その道のりは決して平坦なものではなかった。シーズン序盤は10連敗、5連敗があり、借金は最大11まで膨らみ最下位に低迷。夏を待たずに終戦……“暗黒時代”と呼ばれていた頃を思い出すような始まりだった。
しかし、あの頃と違うのは、誰一人として優勝を諦める者はいなかったということだ。
「始まりは厳しい状態だった。けれども、あのとき誰も下を向くことなく前向きにやってきた。その結果がシーズン後半の戦いにつながった」(ラミレス監督)
「個人的にも、チームとしても、諦める感じはまったくなかったですし、いくらでも取り返せると思っていました」(筒香嘉智)
チームが不調でも横浜スタジアムは常に超満員
諦めていなかったのはファンも同じだ。チームが不調でも横浜スタジアムは常に超満員。スタンドはいつでもベイスターズへの期待であふれていた。
冒頭に記した「一体感」は、どんなときでも応援してくれるファンの存在も大きい。今シーズンからライト側スタンドに3500席のウイング席が新設され、観客動員数が大幅にアップ。
それに比例してスタンドからの後押しもより大きなものとなった。横浜スタジアムでの高い勝率は、ホームでの圧倒的な声援と無縁ではないはずだ。
「ウイング席ができて、マウンドに向かうときのヤスアキジャンプの鳥肌の立つような歓声を今まで以上に背中に感じていたので、その中でマウンドに立てる喜びを強く感じました」(山﨑康晃)
「今シーズンは声援に後押しされて投げることができた。横浜スタジアムでは負けられない、負けてはいけないという気持ちでこれからも投げていきたいです」(今永昇太)
「マウンドに立つと声援がウイング席から降りてくるような感じで、応援がよく聞こえるんです。声援を味方にできるので横浜スタジアムは投げやすいです」(上茶谷大河)
選手たちの証言からも横浜スタジアムの雰囲気、ファンの応援が力になっていることは明らかだ。2020年にはレフト側も新設する予定であり、選手への後押しはさらに大きなものになっていく。
チームとファンが一丸となった戦いで勢いを取り戻したベイスターズは、5月以降快進撃を続ける。
夏場にケガ人が続出したときは筒香が5年ぶりにサードを守ったり、石田健大が中継ぎと先発を行き来しながらフル回転したり、みんながチームの勝利のために心を一つにして戦った。
結果的に優勝にこそ手が届かなかったものの、一時は首位のジャイアンツに0.5ゲーム差まで肉薄し、セ・リーグのペナントレースを大いに盛り上げた。