(5)やり方を間違えていても指摘しない

――パパのやりやすそうなものを見つけてあげるんですね。

飯山:そうですね。とにかく、最初のきっかけが大切なんです。

「子どもとこういうふうに関わるっていいな」と思ってもらえれば、その経験が積み重なって自分からやるパパに変わっていくんです。

やってはいけないのは、お父さんが上手にできなかったときに「あ~、そうじゃなくて」と否定的な言葉を最初にかけてしまうこと。せっかくのやる気がそがれてしまいます。

そんなときは、その場では「ありがとう」と言って、あとから自分で直せばいいんです。

お父さんの気分を盛り上げてあげて、やること自体に抵抗がなくなれば、回数をこなすうちに自分で気づきますから。そこは信じてあげてください()

まずは、やってくれるだけでいいと思うこと。最初から正確さを求めていくと、お互いにイヤになってしまいます。

(6)普段からのコミュニケーションが基礎に

――普段から夫婦でたくさん会話を交わすことは大事ですね。

飯山:特に子育てにおいては夫婦仲がいいかどうかが決め手です。

子どもが病気になったり素行が悪くなったりするとき、夫婦仲がよくないケースが結構あります。

会話がなかったり、旦那さんが帰ってこなかったり、夫婦ゲンカが絶えない、など。

すると大人もそうですが、子どもの心や身体にも影響が出ます。

ホルモンへの影響が大きいですね。ドーパミン、セロトニン、アドレナリンといった脳内ホルモンの分泌は感情によって変わりますから。

不安や不満があると、ホルモンの影響で体の調子がおかしくなるのは自然のことなんです。

*ピグマリオン効果・・・1964年に教育心理学者ロバート・ローゼンタールが唱えた。「人は期待されると、期待されたとおりの成果を出す傾向がある」という主張。

(7)「ありがとう」は積極的に伝える

――まずやってもらう。上手に、完璧に、はその先なんですね。

飯山:夫婦間には甘えがあって、ついきつい言葉や態度が出てしまいがちですが、よく考えれば夫婦は他人なんです。

だから、普段から相手に対する尊敬の念や感謝を感じていないとうまくいかないですよね。

手伝ってもらったときには「ありがとう」と伝えることも大切です。旦那さんが「ありがとうって言われるとうれしいもんだな」と思えば、自分も言うようになります。

お互いに「やってもらっていること」にはなかなか気づかないということですよね。それに気づける家族が、いい家族なんでしょうね。

でも日常生活では、じつは女性の方が我慢してることが多いですね。僕は男性ですけど、それでもわかります。

男性は外に出ている時間が多いので、ある程度発散できるんです。

だから、女性の社会進出が進むということは、女性の発散の方法が増えてきたとも言えますね。夫婦関係というものをもう一回見直さないといけない時期なのかもしれません。

男性は単純で、自分を持ちあげてくれたり自分をよく思ってくれる人のために頑張ろうって思うんです。

反対に、奥さんから虐げられると家庭だけでなく仕事する意欲もなくなってしまうわけです。

奥さんが喜んでくれたり、がんばってとかありがとうとか言ってくれると、家庭が円満になるだけでなく「頑張って仕事しよう」っていう風にも思えて仕事にもいい影響があるんですよ。

――男性にとって家庭と仕事はリンクしてるんですね。


飯山さんの著書『いまどきの子を「本気」に変えるメンタルトレーニング』、前著『いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング』(ともに秀和システム刊)では名門高校野球チームの選手たちとの具体的なやりとりを例にとり、メンタルトレーニングの方法が解説されています。

言葉のかけ方ひとつで、生徒たちが前向きで自信あふれる気持ちを取り戻していく姿に目を見張ります。

そして今回、飯山さんのお話から感じたのは、コミュニケーションにおいては「どういう言葉をかけるか」以前に「どういう気持ちで言葉をかけるか」がいかに大切かということ。

それは、もっとも近い他人である夫婦の場合も同じです。

「言わなくても、わかるはず」と思いがちな夫婦間だからこそ、どんな気持ちで言葉をかけるかに気を配りたいものです。

ライター。業界紙、エンタメ系雑誌記者を経て、現在フリーランス。日々の暮らしに「へぇ〜」のアクセントを提供したいと日々勉強中。関心あるテーマは教育、お金、哲学。好きな本のジャンルは児童書・YAで、特技は物語の世界に入りこむこと。