子どもたちを取り巻く社会や環境の変化により、現代の子ども達は、自然の中で遊ぶということがなくなってきました。
自由に遊べる自然がなくなってきていることや、治安の悪化により子どもを外で遊ばせられなくなってきていることが原因の1つではありますが、自然の中で自由に楽しく遊ぶ経験なくして、生き物や自然を愛する優しい心が育つでしょうか。
そんな中、日本の幼稚園や保育園で今注目されている環境教育が「森のムッレ教室」です。
環境先進国であるスウェーデンの公立保育園で約8割が導入していると言われている「森のムッレ教室」は、自然に興味を持ち、自然を愛し、その中で自然感覚を育むことを目的とした教育法で、スウェーデンでは60年近い歴史を持っています。
また、森のムッレ教室は、自然で思いっきり体を動かし遊ぶことにより、身体能力や神経が鍛えられるのと同時に、自然の中で考え、待ち、辛抱し、驚き、判断し、喜び、思いやり、協力することを感覚的に養っていきます。
なぜ今、日本の幼稚園や保育園でこの「森のムッレ教室」が注目され、子どもに良いと言われているのか、『幼児のための環境教育―スウェーデンからの贈りもの「森のムッレ教室」』を参考にご紹介してみたいと思います。
「森のムッレ教室」の「ムッレ」って何?
「ムッレ」とは、スウェーデン語で「土壌」を意味します。
「土」は地球上の全ての命の源であり、虫や動物ばかりではなく人間も土とつながっているということを伝えたいという願いが、スウェーデン語の「ムッレ」という名前に込められています。
ムッレは、子どもたちと自然との橋渡しをする森の妖精として、子どもたちと遊んだり、歌を歌ったり、自然について教えてくれる存在です。
ムッレ教室では、そんなムッレが子ども達の前に手人形や紙人形として登場し、森の中の妖精としてファンタジックな演出をします。それが5~6歳児にとってはスリルがあり、想像力をかきたて、自然への関心を高めているのでしょう。
森のムッレは、自然への配慮をあらわすシンボル的存在です。幼い頃から自然を大切にすることを学ぶことにより、生物とそれを取り巻く環境の相互関係が理解でき、エコロジーへの基盤が構築されます。
ムッレは人間界の子ども達に自然感覚を養ってもらうため、森の妖精として重要な役割を担っているのです。