立っているだけで何かが伝わるのが理想
――でも、最初に言われたように、3月だけで30年を描くというのは難易度が高かったと思うんですけど、どんな風に表現されたんですか?
撮影に入る前に監督と「特殊メイクとかするんですかね?」「どうするかな~」という話をしたときに、「でも、韓国映画の『ペパーミント・キャンディー』(99)は1人の男の20年を描いていたけれど、全然変わってなかったですよね」という話題になって。
――成田さんからその話をしたんですか?
僕からしました。そしたら、監督も「そうだよね」という反応で、「しわを足したり、白髪ぐらいですよね」という意思の疎通がとれたんです。それに、40歳も50歳も若いですからね。
だから、年をとろうと思わないことが肝なのかな~、こういう経験をしたからこうなるという考え方でいいんじゃないかなという結論に至ったんです。
――その年齢その年齢の出来事を経験して変化していくという感じですか?
意識して40代はこのぐらい腰を曲げて、50代ではさらに曲げてっていうことではなく、その年齢ごとの弥生と対面したら、こうなるよねっていうことです。やっぱり、立っているだけで何かが伝わるのが理想なので、あまり余計なことはしないってことですね。
――そういう意味では弥生を演じた波瑠さんに助けられたところもあるんじゃないですか? 波瑠さんは弥生に似た人のような気もしますし。
そうですよね。弥生に似ていると僕も思いました。撮影の合間も弥生としてしか見てなかったですから。でも、それで自然にできたのはよかったと思います。自然にできるってスゴいことなので。
「ほかに誰か弥生に似てる人はいる?」って聞かれても、ちょっと想像できないですね。
――『弥生、三月 -君を愛した30年-』という作品そのものに対しては、ご覧になってどんな感想を持たれました?
ドラマチックだな~と思います、本当に。ラブ・ストーリーは基本的にすれ違いですもんね。そこにはツッコミどころがいっぱいあるし、傍から見たら簡単なのにな~と思うどこにでも転がっているエピソードの連続で。
実際、これも大きな話ではないけれど、弥生と太郎にとってはすごい激動の人生なんですよね。ただ、特にこの作品は自分では客観的に観られないんですよね。
なかなか難しかったし、大丈夫かな~? と思いながらやっていたので、逆に観た人の感想を聞くのが楽しみです。
待機作続々。いまはすごく充実している?
――それにしても、去年から今年にかけて成田さんの出演作が次々に公開されて、待機作も何本か控えてますね。
“弥生”の後、『糸』(4月24日公開)、『街の上で』(5月1日公開)、『窮鼠はチーズの夢を見る』(6月5日公開)『まともじゃないのは君も一緒』(11月公開)がありますね。
――『街の上で』は成田さんの主演作『愛がなんだ』に続く今泉力哉監督の作品ですけど、まさかあんなに出演シーンが多いとは思わなかったです。
そうですよね。僕はまだ観れてないんですけど、自分でもまさかあんなに出るとは思っていなかった(笑)。
――でも、実際に俳優を仕事をしている成田さんが“あの役”で出ているのがいいですよね。
そうそう、面白いですよね。
――ふたりの男性の揺れ動く恋を描く『窮鼠はチーズの夢を見る』に出演されたのはちょっとした驚きでしたけど、不安や戸惑いはなかったですか?
ないですね。素直にやりたいなと思いました。この仕事をしていたら、行定勲監督に誘ってもらえるのはやっぱり嬉しいことですから、「どっちの役でもいいから、やりたいです」って言いました。
――作品ごとに違うキャラや顔をしているけれど、どの成田さんもイキイキしていて、芝居を楽しそうにやっているなという印象を受けます。
楽しいです。
――いまはすごく充実しているんじゃないですか?
そうですね。でも、新しい作品に入る度に自分の足りない部分が実感できるし、面白い人たちと一緒になると面白いことが起きるなと思うので、これからはより丁寧に作品を選んでやっていきたくて。
最近まで放送していたドラマ「アリバイ崩し承ります」の現場もすごく楽しかったし、安田顕さん、勝村政信さんが本当に面白かったから、学ぶことばかりでした。あの現場で学んだことをどこかで披露したいと思っているんです(笑)。
――成田さんと仕事をしたいと思っている監督も多いでしょうから、そのチャンスはすぐに来るんじゃないですか?
たくさんの作品に出させてもらったので、僕のことを知ってくれている監督さんも増えました。
でも、僕自身はここからだと思っていて。いまはいろいろチャレンジさせてもらっていますけれど、ここからどうやっていくのか? がとても大事だと思っています。