――トラブルがあったとはいえ、その流れを汲む2017年の2月に『虐殺器官』が公開されます。山本さんにとって、いまアニメーション映画を作ることについて、どういう風に思っているかお聞かせ頂けますでしょうか。

山本:『虐殺器官』は『君の名は。』のような作品では正直なくて、よりコアなものなんですよね。僕はいつも作品を作るときに、第1ターゲットとしてどういう人が本当に観たがっているのか、ということをちゃんと考えるとともに、ターゲットに入らないようなプラスアルファの層ってどこだろうということも考えるんです。

そういうときに本作は社会派的な方向をすごく考えていて、アニメファンではなかった人が観るということが――その数は『君の名は。』ほどのことにはならないかもしれないですが――そういうプラスアルファみたいな人たちを取れるといいなと思っている作品ですね。

今この瞬間のアニメのトレンドには興味がないけど、これをきっかけにアニメを観るようになった、という作品をいかに作れるかというのが使命だと思っているので、そういう意味では『ノイタミナ』との共通性はそこですね。

――仮に『虐殺器官』をTVである『ノイタミナ』でやる方向性は考えられないですか?

山本:どんどんTVが弱くなっていく中で、企画の特別性やどうやってみんなの注目度を浴びるのか、という中でいうと、こういったテーマ性のものをやる可能性は、今後あるんじゃないですかね。

いまのニーズでいうと、『虐殺器官』をTVでやったときにみんなが観たがるかというのはちょっとわからないです。TVアニメはずっとそうですけど、いま視聴者は特に癒しを求めていますから。疲れるじゃないですか、『虐殺器官』は(笑)

――骨太ではあるけれど、そういう意味でも劇場でじっくりと。

山本:そうですね。TVだと、癒しとノリですよね。みんなで盛り上がれるノリが大事なんですけど、『虐殺器官』はノリがいい作品ではないので。ノリよくバンバン殺すみたいなところはあるかもしれないけど(笑)なので、結果的に劇場っぽい作品だと思います。

――ありがとうございました!

©Project Itoh / GENOCIDAL ORGAN

トラブルに見舞われるも、それを乗り越えて作り上げるスタッフの情熱――。完成された骨太な作品を劇場でご覧になって、伊藤計劃氏が残したものや作品に込められたさまざまな想いをぜひ感じ取ってみてください。『虐殺器官』は2017年2月3日(金)より全国劇場にて公開中です。

アニメ誌・ゲーム誌の編集を歴任し、現在はWEBメディアのディレクターなどを務める編集ライター。アニメや映画取材をはじめ、日本全国津々浦々、お祭りや秘境取材などもする突撃派です。