なぜ台湾のバンドが“日本のエンタメ支援”に立ち上がったのか?
台湾の3ピースバンド、Elephant Gym(大象體操=エレファントジム)が、日本のエンタテインメント業界や医療機関・自治体などに対しての活動支援への助成のクラウドファンディングを立ち上げた。
台湾を拠点に日本を始めワールドワイドな活動を行っている同バンド。
日本の音楽にも強い影響を受け、幾度のジャパンツアーや日本人アーティストの共演などもしている。
防疫措置のクイックリーな対応や徹底、損失補償等々COVID-19(コロナ)対策において高い評価を持つ台湾。とは言っても自国でもその被害は相当なはず。
にも関わらず彼らは何故、日本の為にこの支援策を立ち上げたのか?
その想いや真意、その先に待っている何か、そして台湾COVID-19対策の国民側からの見地をメンバーが真摯に答えてくれた。
国境など枠組みを越えて、サポートし合っていきたい
ーー今回の日本への支援ですが、まずは思い立ったキッカケから教えて下さい。
「それはもちろんCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が理由なんだけど、日本で本当に信じられない数のライブがキャンセルされたり、レコードショップやライブハウスが閉店の危機(実際に閉店しているところも)であると知って、です。
日本ではここ台湾よりそれらを維持するコストも高いだろうから、収入がない中で生き残るのは厳しいだろうと。
日本のマネージャーであるSho(所属レーベルWORDS Recordings吉本翔)から連絡をもらいながら、少しでも助けになれることがあればと思って始めることにしました」
ーーこの活動を通して日本にどのようなことを望まれていますか?
「今回は日本に対してというわけでなく誰にとっても重要な教訓になったわけで、世界的な危機に直面した時、個人でも国家でも、自身や大事な人を守るために迅速な判断を下し、どの情報が信頼でき本当に重要なものなのかを見抜くことが大事だと感じました。
実際の金銭的支援に加えて、国境など枠組みを越えてサポートし合うという動きが少しでも広まってくれればと願っています。
台湾がCOVID-19をうまくコントロールできているところも知ってもらえる機会にもなるかもしれない」
ーー具体的な支援へのリターンを教えて下さい。
「2020年1月13日に渋谷クアトロで開催したワンマン公演のライブ映像があったのでそれを軸に、様々用意しました。
詳細はElephant Gym「SUPPORT JAPAN FROM TAIWAN」クラウドファンディングのページを見てもらえればと思います」
ーー今回の支援金は、どのような形で使われるのが理想でしょうか?
「金額的には豊かな生活を補償できるような額では全くないけれど、少しでも生活や家賃の足しにでもなればと思います。
もし厳戒態勢を引きながらでも、何とかライブができるようになれば、その時にお互いを守るためのマスクや体温計を準備することに使う、といったこともいいのかもしれないですね」
ーーそれによりどのような効果が出ることが理想でしょうか?
「日本はとても優しくてプロフェッショナルな人たちが揃っているから、引き続き同じ業界で働くことができればいいと願っています」
台湾では新規感染者が出ない状況が続いている
ーー現在の台湾は、COVID-19の感染拡大防止に際し非常に優良国に映ります。自国であるみなさんから見た現在のCOVID-19の状況を教えて下さい。
「台湾では新規感染者が出ない状況が続いています(注:5/11現在、海外で感染した帰国者を除けば国内感染例は29日間ゼロ)。私たちはWHOの加盟国ではありません。
よって政府はこういった感染症などに必要以上に注視する必要がある。
まず、当初COVID-19が確認されてから、台湾はこれを非常に重大なものだと受け止めました。
自らや家族の命を奪う可能性があるもので、マスクがなければ不要不急の外出はしないし、手洗いをしっかりして、人との接触もできる限り避けた。
おそらく完璧な解決策というのはすぐには見つからないわけで、この期間に自分たちのできること、仕事ややりたいことに取り組み、家族との貴重な時間を楽しむことが、最も価値あることじゃないかと思います」
台湾を見習うべきこと
ーー台湾ではどのようなことが効果的であったし、他国も見習うべきと思われますか?
責任感があり、信頼足るパートナーと何事も取り組むこと
「まずは、責任感があり、信頼足るパートナーと何事も取り組むこと。
真実を隠しているような人がいれば、どれだけその人から得られるものがあろうと、その人を信じないこと」
日常的に政治に関心を持つこと
「次に、日常的に政治に関心を持つこと。台湾では年配の方だけでなく、若者はとても政治に関心を持っています。
そのため、政府も若者に関心を持つし、どうやって彼らと正しくコミュニケーションをとればいいかを考える。今回のCOVID-19の事態で、それは完全に良い結果として表れました。
政府はLINE、Facebook、Instagramやその他ソーシャルメディアを非常にうまく使いこなし、人々に事実と、やってほしいことを伝えました」
他人に協力的であること
「そして、他人に協力的であること。台湾ではすぐに多くの製造業が自分たちの製品を作るのをやめ、マスクを作り始めました。
不要不急であれば、政府の方針に従い、自分や家族が危険に晒される行動は取らなかった」
政府に対して声を上げること
「最後に、政府に対して声を上げること。アーティストや中小企業はこれまで、自分たちを取り巻く環境に関して様々な提案をし続けてきました。
そのため、今回も政府は彼らに対して、迅速に特別な貸付や補償を出すことができたのです」
ーーその“様々な提案”とは、どのような方法やツールを用いられることが多いのでしょうか?
「正式な方法の一つとしては、同業者を集めてプレスカンファレンス(記者会見)を開催し、直面する問題やどういった支援が必要かを伝えることですね。
その他には政治家、議員さんに国会で審議してもらえるよう提案を提出しています」
これは悪夢の時ではなく、挑戦の時
ーーCOVID-19の感染拡大防止に際し、何か日本及び世界に向けてメッセージがあったらお願いします。
「これは悪夢の時ではなく、挑戦の時だと捉えています。母なる地球は、人類の現代的で派手な生活に、ちょっとした待ったをかけているのかもしれません。
この期間、今までの生活や暮らし、人生を振り返ることができます。
本当に信頼すべき人たちを信頼してきたのか?今の仕事は本当に自分がしたいものだったのか?本当に自分の持つ全ての願望を叶えなきゃいけないのか、もう少しミニマムに生活をして、環境に負荷をかけないことができないのか?愛する人と十分な時間を過ごしてきたのか?
この先、経済的には厳しい状況が生まれるでしょうが、世界は私たちを見捨てたりしないはず。
高度なゲーム機器や電化製品じゃなくて、ペンや紙で家族と遊ぶこともできる。
シンプルでも豊かに暮らすことができると気づけるのかもしれない」
ーー国個々にはなってしまいますが、現在は全世界が一つのものに対して立ち向かい、乗り越えようと努力している感がありますが、それを経た後、みなさん的には何か理想の世の中的なものがあったりしますか?
「子どもの頃って、一年間の間に2、3ヶ月の長く楽しい休みがあったじゃないですか?その時のことを考えて、そこから学ぶことってできないのかなと思っています。
この休みの間何をしていただろうって。よく寝てよく遊ぶように体を気遣って、家族との過ごし、創造性を磨くことができるんじゃないかって」