コロナウイルス拡大防止のための自粛状況を前に、実演舞台芸術の中で、最も果敢に配信という次善策へ打って出たのは、落語家たちでした。
その中でも、わずかな期間のうちに、YouTubeチャンネルの累計視聴数100万超えを達成した春風亭一之輔は、落語界の配信ラッシュの先頭ランナーです。
オンライン落語会「よみらくご」の出演者に名を連ねるこの落語家が、オンライン配信について語る、【re:START エンタメ再始動に向けて】 落語家・春風亭一之輔インタビュー【前編】、 【re:START エンタメ再始動に向けて】 落語家・春風亭一之輔インタビュー【中編】 に続く、最終回第3弾です。
(※この取材は、5/25にオンラインで行いました)
音楽や芝居に比べると、ひとり語り芸である落語は配信に向いている
── 落語界は、コロナの自粛に直面したときに、オンライン配信というものへの果敢な積極性で、他の舞台芸術をぶっちぎっていたという印象があります。
それは落語家の方たちの逞しさであり、冒険心であると同時に、落語という芸能が配信に適していた、ということもあるんじゃないかと思いました。
一之輔 そう。落語はひとりでもできるし、誰かと合わせる稽古も要らない。音楽や芝居に比べると、ひとり語り芸である落語は配信に向いているでしょうね。
── 古典であるがゆえの、著作権のハードルの低さもあります。
一之輔 でも、まあ、これだけの配信状況になるというのは、本当は怖いことでもあります。そこまでの心構えができてないわけだから。
今はまだ、手はじめにやっているけど。やっぱり、満員のお客さんの前でやるというのがベストだと思うし、演者の喜びでもあると思う。
だから、配信という新たな道ができて、そっちが主流になってしまったりしたら……。なってほしくないなっていう思いは、強いですよ。
── ただ、楽観論として、このままライブが衰えていくという気もしません。
落語は、ここ何年も、動員的にいい状況で進んできています。もちろんコロナの後、立ち直りの時間は必要だと思うけど、
「もうライブで観なくてもいいや」って考える方が、たくさんいるのかどうか。
一之輔 ツイッターなどの感想を見てみても「早く生で聴きたい」っていう感想を持つ人がやっぱり多いですよ。「寄席が恋しい」とかね。
実際、演じているぼくらもそうで、配信でしゃべってはいるけど、ライブの方が本流というのは、ぼくらにも、聴いている人にも、共通認識としてありますから、そういう不安はあんまりないですけどね。