左:《夜のスタジオ(スタジオフィルムとラケット・クラブ)》2015年 個人蔵 右:《ピンポン》2006〜2008年 ローマン家

ドイグの映画愛が伝わってくる作品も多数、展示!

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》では、イギリス植民地時代にポート・オブ・スペインの中心地に建てられた拘置所が描かれる。

ドイグは、この建物の近くにある動物園で檻の中にいるライオンから着想を得て、拘留された人物とは対象的に、自由に街の中を徘徊するライオンを描いたという。

「ライオンは、アフリカを出自に持つ人々の地位向上を目指す運動のシンボル “ユダの獅子”として、カリブ諸国にそのイメージが流布している。そうした、幾多のインスピレーションを得て描かれた作品です」(ドイグ氏)。

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》2015年 作家蔵

またドイグは、トリニダード島移住前後から、海辺の風景をモチーフに選ぶようになる。

これまで比較的厚塗りだった画面が、薄塗りの油絵の具、または水彩塗料による鮮やかな色彩のコントラストによって構成されるようになるなどの変化にも注目したい。

《スピアフィッシング》2013年 作家蔵
《赤い男(カリプソを歌う)》2017年 マルグリッド・スティード・ホフマン
《夜の水浴者たち》2019年 作家蔵

「第3章:スタジオのなかで—コミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ 2003年〜」は、ドイグ主催の映画上映会のために自ら描いた映画ポスター40点を展示。

映画の魅力を絶妙な色彩や構図で捉えていて、ドイグの映画愛が伝わってくる。

右:《東京物語》2004年 ヴィーホフ・コレクション
中央:《HANA-BI》2005年 リンギア・コレクション

見ることの魅力と、見ることの複雑さに、改めて気づかされるドイグ作品。油彩画のほとんどが2メートルを超える大型作品で、中には幅3メートルを超えるものも。

そんな大画面作品の、細部と細部、また、細部と全体、そして作品と作品の関わりを、時間をかけて辿ってみてほしい。きっと、絵画の可能性と新たな魅力を再発見することができるはずだ。

なお、入館には事前に日時指定チケットの購入が必要となる。

既にチケットを購入済みの場合はそのまま使用可能で、開館時間中は原則いつでも入場できるが、会場の混雑状況に応じて待ち時間が発生する場合もある。

【開催情報】

『ピーター・ドイグ展』
10月11日(日)まで東京国立近代美術館にて開催

一般:1,700円
大学生:1,100円
高校生:600円

※日時指定チケットの購入はチケット情報ページをご覧ください