ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』が話題になったワケ
── そういう中で、6月13日からドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』が公開され、こちらが大きな話題を呼びました。
大槻 おかげさまで(笑)。ある程度狙い通りと言ったら語弊がありますけど、都知事選が7月5日にあるのはわかっていたので、その公示日の一週間前に公開しようというのは、かなり前から決めていました。そこは絶対ズラさないようにしようと。やっぱり映画というのは、いつ公開するかが、非常に大事なので。
── とはいえ、客席数は半分なわけですよね。
大槻 そうなんです。で、「じゃあどうしようか」、「広げましょう」っていうことで。作品内容を考えて、永田町、千代田区だろうと、ヒューマントラストシネマ有楽町さんには、実はコロナ禍の前から同日公開の話はしていたんです。
で、思った以上にうまくいって、そのあと立川、大森と拡大していって。「自分の劇場だけでやればいいのに」「変わってますね」みたいなことをよく言われますけど(笑)。
── それは珍しいパターンだったんじゃないですか?
大槻 珍しいのかな(笑)。『なぜ君は総理になれないのか』は、共同配給という形でうちが配給に入っていたというのはありますけど、僕はそんなに珍しいことではないと思っているんですよね。
それは、自分のところで完全に引き受けられないことはやってはいけないというか、うちはキャパ100席の小さい映画館ですし、更に今はその半分。単純に独占して上映するのは、作品にとって良くないと思っていて。
もちろん、無闇に広げて、館数だけ稼いで「全国150スクリーンでやりました」とか謳ってもも意味がないと思っているんですけど、他の映画館にご迷惑をかけない形で上映できるのであれば、観られる機会を増やしたほうが絶対いいだろうと。
今、上映したほうがいい映画、今、観てもらいたい映画というのはある
── 今回、迅速な拡大公開に踏み切ったのは、本作が時勢を反映したドキュメンタリーであったことも関係しているのではないでしょうか?
大槻 それはあります。というか、どのタイミングで公開しようかっていう話は、この作品に限らず、上映を決めてからずっとし続けるんですよね。
良い意味で、いつ公開してもいい映画っていうのはあると思いますけど、その時期にあったイシューやテーマというのは、やっぱりあると思うので。だから、いつ公開するかっていうのは、どの時間帯に何回やるのかと同じぐらい大事というか、そればっかりをずっと考え続けているようなところがあるんです(笑)。
やはり、今、上映したほうがいいドキュメンタリー、今、観てもらいたいドキュメンタリーというのはあると思うので。
── 特に、本作のように、社会問題や政治を扱った作品の場合は、公開のタイミングが非常に大事ですよね。
大槻 そうですね。ヘタすると、その問題自体が既に過去のものとなっていることもあるので。
もちろん、どの上映作品も、作品自体は面白いので、いつ観ても面白いとは思っているんですけど、より面白く観られる時期、旬のようなものはやっぱりあるというか。そこはすごく大事なところですよね。