J-WAVEがこの秋に立ち上げるまったく新しい形のイベント、それが『J-WAVE presents INSPIRE TOKYO ~BEST MUSIC & MARKET』だ。
代々木競技場 第一体育館と第二体育館、そして外周エリア全体を会場として、音楽や様々なカルチャー、食、ファッションなどが一気に楽しめると話題となっている。
まだまだ知られざる楽しみ方がありそうな『INSPIRE TOKYO』の魅力と可能性を探るべく、仕掛け人のひとりである、J-WAVEコンテンツプロデュース局コンテンツ事業部部長の渡邉岳史さんに話を聞いた。
東京のローカルラジオステーションだからこそできる発信型のフェス
――東京都心の夏の風物詩として『J-WAVE LIVE』が定着していましたが、イベントを継続する中で感じていたことは何だったんですか?
『J-WAVE LIVE』のスタートが2000年なんですけど、その頃はようやく大型フェスというものが登場しだしたという時期でした。例えば『FUJI ROCK FESTIVAL』は1997年ですし、『SUMMER SONIC』と『ROCK IN JAPAN FES』は我々と同じく2000年です。
ですから、いわゆる日本における現在の形の“フェス黎明期”からあり続けてきたイベントとして、しかも東京のど真ん中で開催するというこだわりをもって続けて来られたのは、東京のミュージックステーションとしてひとつの形を残せたかなという思いはあります。
ご出演いただいたアーティストからよく言われたのは「オムニバスライブなのにお客さんがとてもあたたかい」ということで、それはやはり、ラジオを通じたコミュニケーションがすでにリスナーの方々と継続してできていたからだと思います。
一方で、2010年代以降、フェス文化というものが定着して全国各地で開催されるようになりました。そうしたなかで、フェスの多様性というものをだんだん意識し始めるようになったんです。もっと今の時代に沿ったフェスの形があるんじゃないか――、という風に。
――そうすると、今年初開催となる『INSPIRE TOKYO』は、『J-WAVE LIVE』を進化させたもの、と言えるわけですか?
そうですね。これは、実は偶然の賜物ではあるんですけど、ただ、結果ここで進化させなければいけなかったということなんだなと理解しています。
――偶然の賜物というと?
例年、代々木競技場 第一体育館だけを会場として借りていたのですが、今年は第二体育館も借りられることになったんです。そうすると、その周辺の敷地も含めて使えると。これは今まで通りの形ではない、もっと面白いものができるんじゃないかと思ったんです。
そして進化しなければという思いを突き動かしたものとして大きかったのが、やはりコロナでした。それはイベントに限らずの話なんですが、ちょうど2000年くらいの頃から遡って考えてもメディアというもの自体が何らかの変化・進化をしていかなければいけない時期に差し掛かっている。そこで起こったのがコロナだったので、もともと抱いていた進化への意識を加速させました。間違いなくそういう意識があったからこそ、第二体育館も含めて押さえていたんですよね。
良くも悪くも『J-WAVE LIVE』は座席指定のオムニバスイベントで、ラジオでよくかかっている馴染み深いアーティストの方々が出演してくださるというもの。それはそれで完成された形ではあるけど、ここで一度その殻を突き破って新しいものを生み出していかなければいけないと、これは僕だけではなく会社全体でそういうムードがありました。
――タイトルの『INSPIRE TOKYO』に込めたものは何でしょうか?
正しくは〈INSPIRED by TOKYO〉なんですが、要は、東京から世界に発信できるような場にしたいということです。そこには音楽をはじめ、音楽以外のカルチャー、食、ファッション、エシカルなど様々なものが含まれます。
それは、もともとJ-WAVEの番組すべてがそのような心意気をもって作っているということに根差しています。なので、放送とフェスというアウトプットの仕方が違うだけで根っこは同じなんですよね。東京のローカルラジオステーションだからこそできる発信型のフェスということで『INSPIRE TOKYO』としました。
――イベントタイトルから“J-WAVE”という名称を外すのはかなり勇気のいる決断だったのかなと想像しますが、実際はどうだったんでしょうか?
社内ではわりとすんなり受け入れられましたね。やっぱりそこには、進化しなければいけないという空気というか、これまでの流れも共有できていましたので。
今回は代々木競技場の第一体育館と第二体育館、及びその外周エリアが会場になりますが、例えば道路を1本渡った代々木公園の中には野外音楽堂がありますし、反対側に目を向ければホールもある。どんどんエリアを拡大していきたいというのが本音なんです。だから、ひとつのところに止まっていないという意識をタイトルには反映させました。
先程、東京から海外に向けて発信していきたいと言ったのですが、渋谷という東京を代表する街全体を巻き込んだイベントにすることで、海外から遊びに来る観光客の方々が、「どうせだったら『INSPIRE TOKYO』がやってるタイミングに東京に行かない?」って思ってもらえるようなイベントを超えたイベントにしていきたいと思っています。