2020年8月28日、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品『ブラックパンサー』で、ブラックパンサー/ティ・チャラ国王を演じたチャドウィック・ボーズマン氏が、大腸ガンのため43歳の若さでこの世を去りました。
ブラックパンサーに憧れ、心から敬愛していたファンが、今思うことを書き綴ります。
思い出や軌跡を振り返り、氏に感謝と敬愛の意を表したい。
大きな悲しみが癒えることは決してありませんが、この想いを少しでも皆さんと共有し、救いになることが出来たなら。
まず私は、チャドウィック・ボーズマン氏を、MCUの作品群でしか知りません。
ファン歴は決して長くなく、ブラックパンサー/ティ・チャラ国王としての彼に憧れ、敬愛の念を抱いてきた人間です。
スクリーンの中の彼を追いかけ、もちろん会ったことも話したこともありません。
それでも、彼を尊敬し慕う気持ちは、適当なものでは決してない事を、前置きさせて欲しい。
いちファンとしての、大いなる感謝と敬愛の意を、綴っていこうと思います。
「嫌だ。絶対に嘘だ。」
最初に訃報を目にした時の感想でした。
ハルク役 マーク・ラファロのインスタグラムだったと思います。
なんで、どうして?嫌だ!!
目が耳が体が、全身でチャドウィックさんの訃報を拒否していました。
嫌だ、信じたくない。「信じられない」ではない、決して「信じたくない」。
ありがとう、ご冥福を。なんて、到底言えるはずもない。受け入れられない。
あまりにも非現実的な話すぎて、経験した事のない拒否反応に混乱しました。
心に鉛が落ち込んで来たような感覚に、崩れ落ちそうになるのをどうにか堪えたのを覚えています。
どうしてこんなにも悲しく、胸が張り裂けそうな、身を切られるようなニュースを聞かなくてはいけないのか。
どうしてこんなにも尊く、世界中で愛されている素晴らしい人が、43歳という若さで旅立たなければならないのか。
彼が、そして私たちが何をしたというの?
あまりにも不条理だ、と思いました。圧倒的かつ、暴力的なほどの不条理。
今回の発表で、2016年にはステージ3の大腸がん(結腸がん)の診断を受けていた事が判明しました。
彼のMCU出演作は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ブラックパンサー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』の4作品。
『ブラックパンサー』以降の作品は、いくつもの手術と抗ガン治療、化学療法の間を縫って撮影していたそうです。
病気の事は、仕事仲間の誰にも公表しておらず、誰も彼の病気を知らなかった。主演作品の監督でさえも。
そして、彼を蝕む病気は、年を追うごとにステージ4へと発展。
肉体的にも精神的にも、想像を絶する痛みと苦しみがあったと思います。
それらをおくびにも出さず、誰にも弱音を吐かず、穏やかで慈愛に溢れ、民を思う崇高な微笑みと品位を持ったまま、彼はワカンダの若き国王 ティ・チャラを演じ切りました。
唯一無二のヒーローを演じるという事は、見た目にも説得力がなければいけません。
進行するガンで、みるみるやせ細ってもおかしくないはず。
それでも彼は与えられた役を全うし、完璧に肉体を作り上げて、誰もが憧れ敬愛するブラックパンサーという至上のヒーローを、この世に生み出してくれました。
日本で生まれ育ち、人種差別とは無縁の人生を生きて来た私にも、しっかりメッセージは伝わった。
ブラックパンサーの存在に、どれだけの人が憧れ、救われ、どれだけの人が勇気付けられたか!
彼の計り知れない苦しみと痛み、命を蝕み迫り来る病魔の恐怖と葛藤を、誰も知らなかった。
彼の先には、まだまだ輝かしい未来が用意されていると誰もが信じて疑わなかったし、彼の子供や孫の代、その先まで永遠に、伝説となり語り継がれていたはずです。