愛する息子は、殺人犯か、被害者か、それとも――。
そんなキャッチコピーが興味を刺激する映画『望み』が10月9日より公開中だ。
傍から見るといかにも幸せそうな4人家族に、ある日、事件が起こる。外泊して帰って来ない高校生の息子が、同級生が殺害された殺人事件と何らかの関りがあることがわかる。加害者のうちの一人として逃げているのか、またはまだ見つかっていないもう一人の被害者となっているのか……。
どちらかわからないまま、息子の帰りを待つ家族は、それぞれの思いを抱えて苦悩する。そして、ついに事件の真相が明らかとなる。
岡田健史は本作で物語のカギを握る息子役の規士(ただし)を演じた。最後まで観客に真相がどちらなのか、あるいは他の結末なのか、と、惑わせる演技をし、その類まれなる存在感を見せている。
感じていた想いのすべてを明かしてしまうと、物語の真相と結びついてしまうため、なかなか加減が難しいインタビューでもあったが、言葉をうまく選びながら規士を演じる上で意識していたことや、共演者の印象、そして岡田自身と両親とのエピソードなどを語ってくれた。
規士を演じる上では社会性を無くすことを意識した
――本作への出演オファーを受けたときはどう思いましたか?
まずは堤真一さんと石田ゆり子さんが夫婦役で、その息子役で、原作もあります、と聞いて。
それで原作を読んだのですが、僕は一瞬でファンになりました。男女の違いというか、父親と母親との考え方の違いを柱にして、こんなにも最後まで読者を魅了する作品があったのか、と。
そんな本に出会えたことと、この規士という役をいただけたことが嬉しくて、是非、やらせていただきたい、と思いました。
ただ演じる上では原作に引っ張られることが必ずしも良いことではない、と、僕は思っていて。原作の道筋は理解しつつ脚本を読んで、それを“岡田健史”という素材を使ってどう表現するか、ということを考えました。
――規士を演じる上でどんなことを意識していましたか?
規士がどのような結果になるのか、というのが、この物語の肝になるので、どちらにも振れないようにしました。
どちらかのギリギリのところを狙えば、もっと僕が提示できる表情だったり、声色だったりの表現があったかとは思うんですけど、今回はどちらでもない真ん中を生きようと思ってやりました。
その上でまず僕は社会性を無くすことを意識しました。社会性を無くすことで、規士が限りなく“死”に近いことを表現したくて。結果的に加害者であっても、被害者であっても、規士の状況は“死”に近いだろうな、と感じたんです。
そうしたら、監督も同じようなことを考えていらっしゃったようで、僕はその考えの下、最後まで突っ走ることができました。
――堤幸彦監督とは役柄についてお話しはしましたか?
最初にしました。衣装合わせをしたときに、監督から「反抗期を存分に出してほしい」と言われて。そのときに、僕の中に瞬時にアイディアが降りてきたというか(笑)。
監督にその場で伝えはしなかったのですが、僕が監督とお会いする前から練っていた作戦は間違いではなかったと、確信ができました。
そのおかげか撮影中は監督から何か言われることがほとんどなくて。伸び伸びと規士を演じることができました。