清原さんは逸材。この作品で出会えて嬉しかった

撮影:山口真由子

――両親役の堤さん、石田さん、妹役の清原果耶さんの印象を教えてください。

堤さんの印象は抽象的にしか言えないのですが、浮き足立っているこの世の中に、堤さんが岩のように存在している、というか。

例えば、ファッションで言うと、多少着づらかったりしても、おしゃれの点で、そういうものを着ている人はいますよね。

僕も撮影でハイヒールを履いたことがあるんですけど足が痛くて、そのときに女性は大変だな、と思って、これはエスコートをしなくちゃいけないって思ったんですけど(笑)。

なんかそういうところで本来生きるために必要ではないことをして、世間が浮き足立っている中に、堤さんが岩のように存在しているのが、僕は好きなんです。

石田さんからは、僕はひたすら母性を感じました。演じていないときにも「母ちゃん!」って思っていました(笑)。

僕は高校1年生のときから寮生活をしているので、実家を離れてことしで6年目なんですが、ちょっと母性を求めているのかな?と、現場にいるときに思ってしまいました。ただその渇望した僕の欲求は、規士というキャラクターに生きると思ったので、それも演じるときに活かしました。

清原さんは自分の意見をしっかり持っている方だなと思いました。あの年齢で、自分の意思をしっかり出せるところが素敵だな、と。

僕が言うのも偉そうなのですが、逸材だと思います。それは清原さんが今後出演される作品の規模を見ても、誰もが納得することだとは思いますけど。周りにはないものが確かにあって、僕はこの作品で清原さんに出会えたことが本当に嬉しかったです。

――お芝居を一緒にしてみて感じたことはありますか?

それが規士は家族を見てなくて。一緒にいるシーンでも、規士は下を向いていたり、目線をそらしていたりしているので、僕の目線から皆さんの演技を捉えることができなかったんです。

今回それがちょっと惜しかったな、と思うところでもあります。

©2020「望み」製作委員会

――規士は思春期ならではの、両親への反抗心を持っていますが、その気持ちはどのようにして作っていきましたか?

僕自身は反抗期がなかったんです。さっきも言ったように、監督からも反抗期を出してほしいと言われたけど、反抗期ってなんだろう?って。それで考えたのですが、親目線と子供目線で反抗期って違うと思うんです。

親から見た反抗期って、自分の思い通りになってくれない、どうして私たちの用意した、こんなに素晴らしいレールの上を走ってくれないの?ってことだと思うんです。

ただ子供からすると、素晴らしいかもしれないけど、自分の行きたい方向はこっちではない、みたいなところで。

だから今回で言うと、僕は反抗期というもの自体を特別意識はしていなかったです。最初にも言いましたが、社会性を無くす、ということをすればそれが反抗に見えるだろう、と思ったんです。

冒頭に家族4人で食卓を囲むシーンがあるんですけど、そこで規士が父親の話に無反応で。それは傍から見たら“反抗”に見えるだろうな、と。けど、規士はその話の内容に“反抗”していたわけではなくて、ちゃんと聞いているんですけどね。なので、反応しない、社会性を無くす、ことが規士に求められている“反抗”なのではと思ったんです。

例えば今、僕がインタビューを受けながら、ずっと下を向いていたら、「この人、大丈夫か?」って思うじゃないですか。

そういう風に、生命としては生きているけど、人間としては生きていない規士という存在を、僕は作りたかったんです。