韓国では珍しい立ち飲み屋さん

鍾路3街駅の3番にあるセブンイレブンを背に、屋台通りを右方向に歩くと、緑豊かな宗廟(朝鮮王朝の祭祀場)にぶつかる。そのまま右方向に道なりに行くと、通り沿いに立ち飲み屋さんが2軒見えてくる。

2軒とも年輩客が多く、最初は筆者でも入りにくかったのだが、日本からの旅行客、特に女性がこの店のファンになることが多かった。日本の文化的成熟はすごいなと感心したものである。

筆者の行きつけは奥のほうにある「トゥンスンイネ」。

女将さんに1000ウォン(約100円)を渡せば、おわんになみなみと注がれた生マッコリを手渡される。テーブルにはキムチやナムル、煮干しやニンニクなど作り置きのつまみが数種類並んでいるので、つまようじで刺して自由に食べてよい。

常連のおじいちゃんたちはみな人懐っこいので、カタコトの韓国語やブロークン英語でコミュニケーションするのも楽しい。

店の外のカウンターにもつまみは並んでいるので、そこで一杯だけ飲んでサッと立ち去るのもおしゃれだ。

立ち飲み屋さんの裏手を歩く

立ち飲み屋裏手の路地裏おでん。イワシのダシがきいていて美味

立ち飲み屋の裏手は、かつては色町だったが、70年代頃から貴金属関係の店や工房ができ始め、今は下町のような佇まいだ。

鍾路3街全体に言えることだが、この辺りもかつては若い人に見向きもされないエリアだった。だが、ここ数年のレトロブームで魅力ある街として認識されるようになったのだ。益善洞が飽和状態になった今、これからはこの辺りに洗練された店ができるかしれない。

(つづく)

鍾路3街駅5番に掲示してあった地図に今回までのスポットを書き入れてみた

【鍾路3街とは?】

ソウル旧市街(漢江の北側)の観光地・仁寺洞(インサドン)の東隣りに位置する庶民の歓楽街。おじいちゃんの憩いの場、巨大屋台街、スタイリッシュなカフェレストラン街、新宿2丁目的な路地、ドヤ街などが共存するカオスな街だ。ここ数年、日本のガイドブックに登場するようになった古民家を改装したカフェレストラン街・益善洞(イクソンドン)は鍾路3街の中心部にある。

4月25日(金)16時、チョン・ウンスク「ソウル発オンライン講座」開催

4/25、5/23、6/27の16時~17時は、講座「67年生まれ、チョン・ウンスク」です。講師が個人史を振り返りながら、韓国人と韓国社会の変化を語ります。名古屋の栄中日文化センターの教室でのスクリーン受講も可能です。申し込み詳細は栄中日文化センターまで。

4月30日(金)20時、チョン・ウンスク「ソウル発オンライン講座」開催

今回のテーマは「忘れられない10人の素敵なアジュマたち」。日々の暮らしや旅で出会った母性的でエネルギッシュな女性たちとの交流エピソードを披露しつつ、彼女たちのあふれる愛の源泉を探ります。申し込み詳細は朝日カルチャーセンターまで。

フォトギャラリー韓国「ソン・へ通り」の魅力を写真でさらに見る
  • 鍾路3街駅の5番出口の近くに貼ってある地図。店主が自分の店に客を引こうとしてか、勝手になにやら書き込んでいるのはご愛敬
  • 「ヌンラ・パプサン」の平壌冷麺
  • 鍾路3街駅の5番出口からソン・ヘ通りを北上すると、大衆音楽の街らしいポスターと出合う。この街には今でも流しのギター弾きやアコーディオン弾きが存在する
  • タプコル公園の東側の門まで屋台が並んでいる。この写真は冬なのでテントの幌が下りている
  • 水標路の別名に冠されたタレントのソン・ヘ(写真左)は御年93歳。韓国の大衆文化のシンボルであり、韓国を代表する永遠の“おじさん”だ

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。