女性の情念を描いた古典文学をアニメ化した
『源氏物語千年紀 Genji』

怖い女性、面倒くさい女性……そんな女性像を描いた物語の古典であり原点的な作品といえば紫式部の『源氏物語』です。

この『源氏物語千年紀 Genji』は、アニメ界の巨匠、出崎統(正しい表記は、"崎"の字が"たつさき")さんが『源氏物語』をアニメ化した作品。2009年にフジテレビのノイタミナ枠で放送されました。

全11話という短い話数ながらも、『源氏物語』という古典文学のエッセンスがギュッと詰まった構成となっており、また、そのストーリーを彩る出崎監督による独特な演出術の数々は本作の大きな見どころ。CGによる彩色を駆使した着物の表現など、平安時代の雅な雰囲気が溢れる色彩感覚も素晴らしいです。

主要キャラを演じる櫻井孝宏さんや杉田智和さん、堀内賢雄さんといった"いい声"の男性声優陣によるキャスティングも女性のアニメファンにオススメできるポイントですよ!

さて、自身の理想の女性像を求めて女性遍歴を重ねる光源氏の愛と苦悩の日々を描いた原作同様に、この出崎監督のアニメ版でも様々な女性キャラクターが登場し、源氏とのロマンスが綴られていきます。

本作で注目したいヒロインが、六条の御息所。源氏への恋恋慕の余り生霊となり、源氏が愛する女性を殺めてしまう……という、現代劇にまで通じる女性の怖さと情念を絵に描いたような人物です。

『源氏物語千年紀 Genji』では、その六条の御息所をベテラン女性声優の鶴ひろみさんが熱演。更に、そこに出崎監督の演出が加わり、この六条の御息所がまつわるエピソードは迫力と熱量に満ちたシークエンスに。

愛しい人への愛が屈折に屈折を重ね、やがて、悲劇的な結末を招いてしまう女性の姿が本作では見事に映像化してあり、非常に見応えがあります。

女性の描き方に独自の美学を持っていた出崎監督。真の出崎ファンならば、"女の怖さ"ということで、ここは『おにいさまへ…』をチョイスするべきかもしれませんが、私のような小心者の男子にはアレはちょっと毒が強過ぎて……濃厚な人間ドラマを描きつつも、艶やかで優雅の雰囲気もある本作をオススメさせていただきたいと思います。

恋愛で職場の人間関係で、ふと表に現れる女性特有の怖さや面倒臭さ。今回、紹介したアニメは、そんな女性の姿を強いインパクトで、或いは、真に迫る生々しさで描いた作品であり、なおかつ比較的ポップに観ることができる作品なので、そういった描写がお好きな方には男女問わずに観ていただきたい作品です。

勿論、そういったキャラクターや描写だけではなく、様々な面で魅力タップリの作品であり、どれもトータルでおもしろいアニメですので、未見の方は是非ともチェックを!

※記事アップ時、文中に作品の登場人物名に誤りがありました。
「欄花」→「蘭花」に訂正いたします。

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。