2021年5月20日、コーエーテクモゲームスのネオロマンスシリーズの制作チーム「ルビーパーティー」より、『アンジェリーク ルミナライズ』が発売された。
アンジェリークシリーズ18年ぶりの新作とされる本作の発売を記念して、開発チームに制作秘話を伺った。
1994年にスタートしたアンジェリークシリーズが、2021年の価値観をどのようにゲーム内に取り入れていったのか。そこには、ルビーパーティーの細やかかつファンを想う、丁寧な仕事ぶりがあった。
<インタビュー参加者>
・ルビーパーティーブランド長 襟川芽衣(以下、襟川)
・『アンジェリーク ルミナライズ』プロデューサー 伊藤亜紀子(以下、伊藤)
・若手スタッフA(以下、A)
・若手スタッフB(以下、B)
『アンジェリーク』をプレイしたことのない世代に送る、新しい価値観を載せた新作
――『アンジェリーク ルミナライズ』が誕生した経緯をお聞かせください。
襟川:2014年にアンジェリークシリーズが20周年を迎えた記念として、第一作目をフルリメイクした『アンジェリーク ルトゥール』を発売した後、シリーズとして目立った動きはありませんでした。
それから5年が経過して、25周年という節目を迎えたときに、リメイクやナンバリングとはまた違った新しい形で、アンジェリークを世の中に広げてくチャレンジをしたいと考えました。
今まで応援してくださったファンだけでなく、若い世代や、アンジェリークを経験したことのない方たちにも楽しんでもらえるようなもの。
シリーズとして残すべきものと、今の時代だからこそ出来る新しい要素を加えたものにしたいと思い、今まで数々のアンジェリークシリーズに関わり、感性の幅がとても広い伊藤をプロデューサーに『アンジェリーク ルミナライズ』の企画を立ち上げました。
キーワードは「自己承認感」
――まず、アンジェリークがどういうゲームなのか、お聞かせください。
伊藤:アンジェリークは、自分が中心にいて、周りを動かしていくという構造のシミュレーションゲームです。
シミュレーションといいつつ、「私自身」がパラメータを持っていないのが大きな特徴です。
自分のパラメータを磨いたからみんなに認められるのではなく、ゲームデザインとして、最初から私の存在自体が認められているんですね。
ゲームの中では、「守護聖」と呼ばれる神のような男性たちと関わっていくんですが、彼らも当然、そのように私を扱う。そしてその生活を繰り返すことによって、すごく自己承認感を高めることが出来るんです。
アンジェリークならではの良い部分なので変えたくないと思いましたし、逆にすべて、そこを軸にして考えるようにしました。
「イヤだな」の感覚を大切に…2021年を生きる「主人公」とは?
伊藤:25年前といえば、雑誌に「男性に気に入られるための特集」が載るような時代でした。男性に選ばれるためには、という視点のものがたくさんあったんです。
でも今は、まったく違う。男女関係なく、個々人が「こういうふうに生きたい」という目標を持って、模索し、努力して生きている。
ここにいる若手二人もそうですが、私はそれをすごく素敵だなあと感じます。
なので、ゲームのデザインの根幹は残しつつ、そこに乗せる価値観は変えたいと思いました。
40代の私が許容できることと、20~30代の後輩たちが許容できることは、けっこう異なります。
なので、どういうふうに生きていきたいのか、どういうふうに扱われるのが心地よいかを聞きながら、企画していきました。
A:たとえばシナリオでは、「この行動は、相手が勝手すぎるように見えてしまう」などといった話をしました。
もちろん個人の主観もあると思いますし、意見が割れることもありましたが、何を言っても良いとのことだったので、ある程度自由に意見を出させてもらったんです。
――例えばどんなシーンが受け入れられなかったのでしょうか?
B:女性が従うのが当たり前のような行動などですね。
伊藤:シナリオの初稿はキャラによっては私ではない方に書いていただいているのですが、書き手の価値観次第で、結構そのあたりが変わってきます。良い悪いではなく、「タイトルの求める方向性かどうか」という話ですが。
例えば、男性が暴言を吐いた時に「なんだか怒っているから仕方ない、放っておこう」と主人公が「放っておいてあげる」シーンは、今の感覚だと理不尽に感じるはずです。
「イヤだな」という生理的な感覚は、とても大切です。なので、後輩たちの意見は細かく聞くようにしていました。