本当に不思議だったし、100%フラットな気持ちというのは、やっぱり無理でしたね。曲も、歌詞も、台詞も知ってしまっているので(笑)

自分の時を思い出したり、自分が出ていた『王家の紋章』のDVDを久しぶりに観たり、当時、自分の歌や台詞をチェックするために、楽屋でいつも録音していたものを聞いてみたりして、思い出に浸りました。

--やっぱり、あの当時を思い出すと、今回の再々演は、ものすごく感慨深かったんじゃないですか。

感慨深かったです…、非常に。

帝劇に立っていた時って、毎日がすごく怖かったので。

選んでいただけたのは、本当にありがたかったし、毎日、全力で取り組んでいました。

でも、当時の私みたいなレベル…、今もですが…“私みたいなレベルの人間が、帝国劇場に立つものではない”と、私自身も思っていたし、そう思われていたミュージカルファンの方もたくさんいたから。すごく厳しい言葉しか自分の耳には入ってこなくて。

本当に、毎公演が怖かったので、心臓が痛くなるような、ドキドキする気持ちも思い出しました。

アイドルを卒業して、自分にとっては初めての大きなお仕事で、そのお仕事が帝国劇場でのミュージカル。右も、左もわからない状況だったからこそ、乗り越えられたと思っているし、その右も左もわからない状況が、あの作品に合っていた部分でもあると思うんです。

ミュージカル界で大スターの役者さんたちが集まるなかに、畑違いの私がポンッと置かれた状況と、古代エジプトに、現代に生きているキャロルが入ってしまった状況とが重なって。それが作品にマッチしていると思ってくれた方もいたと思うんです。

普段、自分のお芝居を見るのはあまり好きではないので、『王家の紋章』のDVDも、作品が終わってからは、あまり見ていなかったんですが、改めて見直したら、自分が本当に周りから浮いていて。“右も左もわからずに、浮いているのが、まさにキャロルだったんだ”って、やっと自覚できたというか。

「全然違う表現の出し方や、お芝居をされるから、こっちがびっくりしてしまう」

というような事を、当時、ミュージカルをたくさん経験されている方たちに、よく言われていたんです。自分は皆と同じ事をしているつもりなのに、何が違うのか、当時は全然気づけなくて。

でもあれから、何本かミュージカルの舞台に立たせていただいて、あの作品を久々に振り返ってみたら、本当にほかの人たちとは表現している事が違いすぎて。“ああ…、あの時こういう事を、皆さんおっしゃっていたんだ”って、気づけたんです。

--確か、『王家の紋章』の初演の時だったか、稽古中の取材のとき、すごくヘコんでいる感じがしていたのを覚えています。

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