“行列のできる焼き菓子”を作る、名店「フキアージュ」
調布にある焼き菓子とケーキの店『feuquiage(フキアージュ)』。
オープンしたのは2021年11月。じつはその2か月前、実店舗がまだなかったとき、調布駅ビルで「フィナンシェ」や「シュトーレン」などの焼き菓子を1日限定で販売した。開店1時間前から大勢のお菓子好きが集結。長い行列ができた。おそらく200人はくだらなかったと思う。
そのとき買った「カヌレ」が素晴らしかった。皮がカリカリで、芯がしっとりとした、まさに理想的なカヌレだった。
あのカヌレをもう一度食べたい。そう思い、調布へ出かけることにした。
調布駅から徒歩7分ほどの住宅街に『フキアージュ』はあった。
外観も内観も明るいグレーで統一された、シックな店舗。落ち着いた店内に鎮座するショーケースのなかで、焼き菓子とケーキが出迎えてくれた。
オーナーの畠山和也シェフパティシエは国内で修業後、インドネシアのパティスリーでエグゼクティブシェフに就任するなど、国内外で長年研さんをつんできた。その経験を活かし、念願だった自分の店をオープンさせた。
畠山シェフにおすすめのお菓子とケーキを5つ選んでもらった。私のわがままでカヌレも入れてもらった。おそらくシェフ自身カヌレは自信作だと自負しているはずである。
絶妙の焼き加減! ここでしか食べられない極上の「カヌレ」
まずはそのカヌレから。『フキアージュ』では自慢のカヌレを「夜明けのカヌレ」(380円)と命名。「溝のある」という意味のカヌレは、フランスのボルドーで作られてきた伝統的なお菓子だ。
卵や小麦粉、砂糖のほか、バニラビーンズなどで作った生地を溝がきざまれたカヌレ型と呼ばれる、プリンを作るような容器に流し、オーブンで焼く。
畠山シェフはフランスでも使われている、熱伝導率がいい銅製のカヌレ型を愛用している。
「バニラビーンズは、インドネシア産のハイクオリティのものを現地から直送してもらっています」
焼きすぎると皮が厚くて、苦い味のカヌレになってしまう。反対に、焼きがあまいとスポンジケーキのようなふにゃふにゃのカヌレになる。
「50分ほど焼いていますが、とくに特殊な焼き方はしていません」
畠山シェフは当然のことのようにいうのだが、焼き加減が絶妙なのだ。生地に加えた砂糖を加熱することで焦げ茶色になり、香ばしいだけでなく、やや硬めのカスタードクリームのような味わいに焼き上がる。それがカヌレだ。
「湿度が低い冬場ならその日の夜頃までは皮のカリカリ感を愉しめます」
ちなみに翌朝食べたが、食感はもちろん、おいしく食べられた。
紙袋に入れてくれるので、ビニール袋などに入れず、そのまま保管したほうがおいしさが長持ちするそうだ。