『女子高生に殺されたい』2022年4月1日(金)全国ロードショー ©2022日活

『ライチ☆光クラブ』(16)、『帝一の國』(17)などの映画化作品でも知られる鬼才・古屋兎丸の同名コミックを、『性の劇薬』(20)、『アルプススタンドのはしの方』(20)などの城定秀夫監督が自らの脚本で映画化した『女子高生に殺されたい』。

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34歳の日本史教師・東山春人が、進学校の二鷹高校に赴任してくる。

端正なルックスと実直で気さくな人柄を併せ持つ春人は、たちまち女子生徒たちの熱い視線を集めるが、彼には誰にも言えない秘密があった。

それは“美しい女子高生に殺されたい”という、常人には理解し難い罪深い欲求。

二鷹高校にやってきた本当の目的もその願望を叶えるためだったが、春人はついに自分が思うその“理想的な殺され方”を実現させるべく、自らが9年もの歳月をかけて練り上げた完全犯罪のシナリオに沿って、タイプが違う4人の女子高生へのアプローチを開始する!

本作ではそんな不可解で危険な異端の高校教師・春人を田中圭が演じ、彼が近づく4人の女子高生に南沙良、河合優実、莉子、茅島みずきといったフレッシュな若手女優が扮しているのも話題!

さらに原作コミックとは異なる仕掛けを用意し、映画ならではのスケールの大きなクライマックスへと突き進むスリリングな展開になっている。

城定秀夫監督

果たして城定秀夫監督は、アンモラルなのに魅惑的なこの禁断のスリラーをどのように産み落としたのだろう? 監督を直撃して、映画の裏側に迫ってみた。

すべてのキャラクターが最後に集結する映画にしたかった

『女子高生に殺されたい』2022年4月1日(金)全国ロードショー ©2022日活

――『女子高生に殺されたい』の原作コミックのどこに惹かれ、映画化したいと思われたのでしょうか。

いちばんグッときたのは、やっぱり主人公の春人ですね。

こういう普通の人とは違う、性癖なのかどうかも分からない欲望を持った男が主人公の作品は僕もピンク映画などで何度かやっているから、奇妙な願望を持った人がその自分の欲望を充足させるために頑張る話にいちばんグッとくるんですよね。

そういう意味で、春人のキャラクターはすごくいいなと思いました。

――春人が内に秘めている、オートアサシノフィリア(自己暗殺性愛=自身が殺される状況に興奮を覚える性的嗜好)についても事前に調べましたか。

オートアサシノフィリアは世の中に実際にある病気ですけど、ネットで調べても『女子高生に殺されたい』の原作コミックのことばっかり出てくるし、今回の映画でも言っているように研究はほとんど進んでいない。

心理学はまだまだ未発達な学問なので、調べてはみたものの、作品のプラスになるような資料はほとんどなかったですね。

――今回の映画化では、春人が殺されたいと思っている意中の女子高生は誰なのか? といった謎解きミステリーの要素を加えていますし、ラストのシチュエーションも原作とは大きく異なります。

このふたつの改変の狙いを教えてください。

脚本の開発には足掛け2年ぐらいかかっているんですけど、僕が参加したときにはプロデューサー・サイドですでに方向性が決まっていました。

それは、メインの女子高生の人数を増やして、春人が誰に殺されたいと思っているのか? というミステリー要素で映画の前半を引っ張っていきたいというものだったんです。

それで原作にはないキャラクターを新しく3人作って。最初はメインの女子高生が5人いたんですけど、尺の問題で最終的にひとり削ったんです。

『女子高生に殺されたい』2022年4月1日(金)全国ロードショー ©2022日活

――ラストシーンがあの形になったのは?

こちらは、「登場させたすべてのキャラクターが最後に全員集結するようなシチュエーションにしたい」という僕の提案が発端です。

謎解きミステリーを前半で終わらせ、春人の意中の女子高生が誰なのか? を中盤で明かしてしまったら、後半はその子にばかりフォーカスされて、せっかく登場させたほかのキャラクターが活きなくなってしまう。

それでは勿体ないので、全員が活きるようなクライマックスを想定して、文化祭で演劇をやるという設定を加えたんです。

――水でイメージされた春人の幻惑シーンや学生時代のカウンセリング映像なども巧みに挿入し、不気味さと生々しさを増幅させていましたが、ああいった映像表現はどこから生まれたんですか。

プロデューサー・チームとの話し合いの中で、「春人がなぜ特殊な性癖になったのかを描く必要があるんじゃないか?」という話は何度か出たんですけど、きっかけをトラウマや事件にしたくなかったし、それがきっかけだと病気や性癖とは違うものになってしまう。

けれども、春人という人物を作り上げた最初の要因は何かしら提示したかったので、生まれてくる前のイメージをああいう形で視覚化して。そこからの逆算で、原作では限定されていないんですけど、春人が“首を絞められて殺されたい”と思っていることにしたんです。

『女子高生に殺されたい』2022年4月1日(金)全国ロードショー ©2022日活

春人を演じたときの田中圭の目つきがヤバかった!

――監督は、春人役の田中圭さんを撮影現場で見ていて“この役をやれるのは田中さんしかいない!”と思われたようですが、田中さんの何を見てそう思われたのですか。

今回は変態的なセリフが飛び出すような映画じゃないですよね。

表面的には普通の高校の先生だし、ある目的で、ひとりの女子高生に犬をけしかけたりはするけど、裏でもそんなに社会の規範から外れたことをやるわけでもないので、エキセントリックな芝居は求められない。

ナチュラルに変態を表現しなければいけないし、そうなると表情や目つきに頼るしかないと思うんですけど、田中さんが本当にヤバい目つきをしているときがあったんです。

あの目つきは田中さんが作ってきたもので、監督が指示してできるものではないですよ。それに、その場に普通にいる人や劇中で彼と対峙している人はあの異常な目つきに気がつかないと思う。

この映画の設定で撮るから、すごく変態に見えるんです。

――普段から物腰の柔らかい田中さんが演じられているから、女性との接し方や話し方も自然で説得力がありました。

そうですね。変態っぽいイメージの人がやってもつまらないし、女性に優しくてカッコいい先生を演じるのではなく、ナチュラルにカッコよくて女性に優しい人が実は……みたいな方が面白いですよね。

そういう意味でも、田中さんにやっていただけて本当によかったと思います。

――田中さんが演じられて、監督が思っていた以上によくなったシーンはありますか。

さっきの話と重なりますけど、子供たちを見つめる表情ですよね。あのときの春人の目つきはスゴかった。

それは「性的に興奮しているわけじゃない」って劇中の春人も言っているように、イヤらしい意味ではないんですけど、春人の計画した自己暗殺の成否の鍵を握る謎の女性“キャサリン”と出会ったときの顔も普通じゃない。

すごくオーバーなことをやっているわけでもなく、ただ見ているだけなのに、そう感じさせるのはスゴいと思います。

――監督が演出で足されたものもあるのでしょうか。

「台本を読んで、何か分からないところはありますか?」って聞いたときに、田中さんは「いや、何もないです。撮影がすごく楽しみです」って言われていたんですね。

それに田中さんが忙しくて、事前に擦り合わせる時間もなかったので、田中さんが作ってきた春人像を見ながら、現場で作っていったんですけど、特にはないですね。

そういう意味では、僕は田中さんが作ってきた春人像に乗っかった感じです(笑)。