大人は大人なりに、お子さんはお子さんなりに、それぞれがおもしろがれる場所

アイデアスケッチで壁一面が埋め尽くされている

展示室に入るとまず目に飛び込んでくるのが、約2000枚という小さなサイズのスケッチだ。

これはヨシタケが絵本作家デビュー以前から常に持ち歩いている手帳に描きためていたスケッチを複製したもの。大きな壁面が約13×8センチメートルという小さなスケッチで埋めつくされている。

展示風景より

「半年間だけ会社員をしていたんですけど、結構辛かったんですね。それで紙に愚痴をイラスト付きで描いていたんです。でも会社の人に見つかったら大変なので、小さく描いていて、気づいたらそれが自分にとって描きやすいサイズになっていました(笑)」

人気絵本の原画やアイデアスケッチの展示は、現物とともに拡大パネルが設置されているものも。ほかにも「じごくのトゲトゲイス」「りんごでうるさいおとなをだまらせよう!」など、ユニークな体験展示も用意されている。

『りんごかもしれない』アイデアスケッチと原画

「僕が子どものころ、展覧会に連れてきてもらってもつまらなかったんですよね。なので今回わざわざきて頂いた方には、大人は大人なりに、お子さんはお子さんなりに、それぞれがおもしろがれる場所がある方がいいなという思いがありました」

『つまんない つまんない』のアイデアスケッチ

ほかにも、壁と壁の間に、こそっと私物や資料が展示されていたり、付箋に手書きで解説が書かれていたり、動く年表が設置されていたり。会場じゅうにちりばめられた細やかな演出が楽しい。

座るとお尻が痛い「じごくのトゲトゲイス」

「(世の中には)いろいろな人がいて、ストレス解消のためにやっていたことが仕事にまでつながることもある。決まったことだけで正解にたどり着く訳じゃない、紆余曲折を経て、思わぬところで何か自分のもっていることが役に立つことだってある。

そういうことを僕は小さい頃に誰かに教えてほしかったですよね。なので絵本を書く中で、僕が通ってきた道、そういう自分が小さいころ知りたかったことを形にできればいいなと思っています」

各年代のヨシタケがくるくると回転する年表

展覧会は世田谷文学館のあと、兵庫、広島、愛知へと巡回する。

開催情報

『ヨシタケシンスケ展かもしれない』
4月9日(土)~7月3日(日)
世田谷文学館にて開催