これまでの仕事が今の自分を作っている

撮影/杉映貴子

――これまでも声優を務められたことはあると思うのですが、その経験は自信につながっていましたか?

もちろん、経験値としては上積みされていますけど、気持ちとして上積みされていることはなくて。前回うまくいったから、自信が持てるというのは一切ないですね。でも、プロとしてやっている以上、不安になっているのはよくないので、現場に入ってからは、自分ができることを精いっぱいやらせてもらいました。

――収録中に演出をつけていただくことで印象に残っていることはありますか?

例えば、もうちょっと声を張ってほしいとか、もう少し声のトーンを下げてほしいとか、そういう演出って声優以外のお仕事でも受けてきたんですけど、役者からしたら少し難しくて。

言われた形容詞で状態を演じることになるんですよね。「もっと悲しく」って言われて悲しそうに演じるよりも、こういう気持ちだから、結果として悲しくなるよね、という感情面からの演出を最初からしてくださったので、とてもやりやすかったです。

撮影/杉映貴子

――演じていて、大変だったり辛いところはありましたか?

走りながら、とか、飛びながらセリフを話しているところは、声優だとその負荷がかけられないんですよね。普通のお芝居の現場だったら、その状況を演じているから、本当のリアクションがでるけど。いかにその負荷を自分自身でかけて、その声を作れるか、というのが一番難しいところだと思うんです。

それは練習するのではなく、現場に行って、実際に負荷をかけてやってみたりしていました。パルクールの息遣いは昔、戦隊ものをやっていたときのアクションの息遣いとちょっと似ていたのでよかったんですけど、それ以外のところは、現場で作っていましたね。

――過去の作品も今の志尊さんの力になっているんですね。

もちろん。この作品のこの部分が役に立っている、というわけじゃなくて、ひとつひとつの作品の積み重ねが今の自分だな、と思います。