某専門店の台湾カステラは揺れることはなかった

某専門店の台湾カステラは、パサパサ感がいなめなかった。台湾カステラを持った手を上下に動かしたが、揺れることはなかった。

〈某専門店の台湾カステラと長崎カステラはどう違うのか。相違点を50字以内で述べよ〉と問われても答えられない。だって違いがわからないし。

一方、『名東』の台湾カステラは、焼き上がりから9時間経っていたが、大いに揺れた。

揺れればいい、というわけではないはずだ。けれど、揺れ具合が味に出ていると断言できる。

某専門店のと比較すると、艶があり、生地のキメが細かく、卵の風味が立っていた。

某専門店の台湾カステラも、長崎カステラも、大なり小なり気泡がある。

【台湾カステラ専門店『名東』】14本に切り分けたものを箱に入れてくれる

ところが、『名東』のは気泡をほとんど確認できなかった。このキメの細かさが味にもはっきりとあらわれていると断言できる。ドン、ドン!(机を叩く音)。

舌触りがなめらかで、口に含んだ瞬間溶けていくような食感。たとえるならば、サイダーみたいなシュワシュワ感。

揺れ具合も含め、これは台湾カステラというよりもプッチンプリンだ。

でも、プッチンプリンのように甘くはない。もちろんカステラなのである程度の甘みはあるとはいえ、しつこい甘さではない。

翌日、電子レンジで温めてみた

翌朝、『名東』の台湾カステラと某専門店のを電子レンジで温めてみた。

某専門店のは温かいほうがおいしいと思ったけれど、なめらかな舌触りはあまり感じられなかった。もちろん揺れなかった。

『名東』のは温めたことで、キメの細かい味わいがさらに際立った。香りもいい。

この子は、温めてあげたほうが俄然本領を発揮するようだ。残りを冷蔵庫で冷やして食べてみたが、冷やしてもおいしかった。夏は半分温めて、半分冷やして食べてもいいかも。

そもそも台湾カステラの定義をよく知らない。これまで日本で焼かれてきたものが台湾カステラであるならば、『名東』のはベツモノかもしれない。

台湾カステラ好きな紳士と淑女の皆さん。『名東』の台湾カステラがどうベツモノなのか、目と舌で確認していただきたい。

ぷるんぷるん揺れる台湾カステラを目で愛でてから食べよう。

でもその前に。ジーパン刑事になった気分で叫びましょう。

「なんじゃこりゃー」

【台湾カステラ専門店『名東』】『名東』は、キラリナ京王吉祥寺の入口の脇にある

台湾カステラ専門店『名東』

住所/東京都武蔵野市吉祥寺南町2-1-25キラリナ京王吉祥寺2F
電話/0422-24-9038 営業時間/10時~21時
定休日/不定休 ※キラリナ京王吉祥寺に準ずる

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。