もはや芝居じゃかなった気がします
――原作を読んだ時の感想を教えてください。
黒羽:一見、ギャグマンガにも見えますけど、元野球部の僕からするとリアルです。誇張している部分もありますけど、野球部だけでなく体育会系の人なら「ホント、この通りだな」って思うと思います。
それでいてキツイこととか、おふざけの中にも意外とジーンと来るところもあって。我々のような人間には刺さるものがあります(笑)。
醍醐:僕も……麻璃央くんと一緒です(笑)。本当に全部そうなんです。原作を読んだ時は「これだけ笑ったのは久しぶりだな」と思うくらい笑いました。とにかく面白かったです。
黒羽:劇中にも“あるある”を解説する人(元プロ野球選手・里崎智也)が出てくるんですけど、その“あるある”の一つひとつが経験者からすると「うんうん、わかるわかる」っていう気持ちになるんです。例えば高校一年生の頃は、本当に三年生なんて全員がおじさんに見えていたし(笑)。
完成した映画を観るとわりとコメディっぽいところはありますけど、撮影中は飯塚(健)監督が部活の監督のような感じで、リアルに部活をやっているような感覚でした。いち野球部員として野球をしているような。
声を出している場面では本当に大きな声を出していたし、息遣いとかも全部リアルなものだし、まさに「野球に狂え」という感じの撮影期間でした。
――「ジーンと来る」というのはどの辺りでしたか。
黒羽:三年生が引退する時にやった引退ノックのシーン。何なんですかねあの感覚は。怖い先輩とか、正直、上手くもないのになんでレギュラーなんだよって思っていた先輩とか、早くいなくなれって思っていたのに、いざいなくなってしまうと思うと。
それまでの感情とは裏腹に寂しくなったり、ほんの一瞬の楽しかった時間を思い出して名残惜しくなったり、不思議だなと思いつつジーンときました。これは野球部に限らずだとは思いますけど、毎日を一緒に過ごしていたような人たちが明日からいなくなるっていうのは寂しいものですよね。
醍醐:僕も引退ノックのシーンはジーンと来ました。僕の場合はこの作品の撮影期間のことを思い出したりもして。あのシーンは実際に肉体的にも追い込まれていて、カットがかかった瞬間にもう動けなくなっている人とかもいたぐらいで。本当にいろんなもの削って頑張ったなって。
――自分たちの撮影の日々とも重なって。
醍醐:そうですね。だからそういう意味ではもはや芝居じゃかなった気がします。
黒羽:そうだね。
醍醐:本気で限界の顔をしていました(笑)。