期間限定とはいえ突然ノービザ渡航が可能になり、そわそわしている日本の人も多そうだ。
今回は、2年半以上の韓国ロスを満たして余りあるダイナミックな肉料理を取り上げよう。
牛大(ウデ)って何?
「今夜のバーベキューはウデを焼くよ」
「ウデって何?」
ソウル郊外にある知人の造形作家の家で飲み会があった。酒と肉、そして音楽が欠かせない楽しい集まりだ。
クラリネットの演奏でいつも会を盛り上げてくれるチョさんが準備してきた肉が、まさにウデカルビだった。
韓国のカルビ(バラ肉)はその出自、部位、かたち、サイズ、調理法、味付けなどによってさまざまな名前が付けられる。
映画『エクストリーム・ジョブ』に名前が出てきた水原カルビ、京畿道の二東カルビ、大ぶりな王カルビ、LAカルビ、冷凍していない肉を使う生カルビ、甘辛い味付けのヤンニョムカルビ、ドゥンカルビ(豚のバックリブ)など。
この日、私が初めて出合ったウデカルビのウデにはどんな意味があるのだろう?
韓国人や韓国語学習者なら同じ発音の「優待(ウデ)」を思い出すかもしれない。優待カルビ。何かいいことがありそうな名前である。
じつはウデは優待とは無関係で、牛(ウ)と大(デ)をくっつけた造語という説が濃厚だ。しかし、それは大きな牛のことではなく、大胆に切り分けた牛骨を指しているという。
いわば、特大骨付きカルビである。
骨を持ってかぶりつきたい!
ホットプレートの上に長さ30センチはありそうな骨付きカルビ4本がのせられた。骨づたいにたっぷり肉が付いている。塩とコショウをふって焼く。煙が上がる。匂いだけで一杯やれそうだ。
我が国では両手でつかんで骨から肉をこそぐように食べることをハモニカ・カルビというが、ウデカルビは巨大ハモニカ・カルビともいえる。
両手で骨を持ってレアな肉にむしゃぶりつく。旨い。今夜のメンバーはアラフィフが中心。霜降りをありがたがる時期は過ぎているので、肉は赤身が多いタイプだ。噛み味がいい。肉を食べるというのはこういうことだ。ハモニカという食べ方がそれを思い出させてくれる。
血のしたたる肉にかじりついている私を見かねたのか、チョさんがトングとハサミで骨から肉を外し、食べやすく切り分けてくれた。
酒といっしょに楽しむならこのほうがいい。久しぶりにウイスキーオンザロックを合わせてみた。幸せだ。
韓国ではウデカルビのような特大骨付き肉のことをマナコギ(マンガ肉)と呼ぶ。
アニメやマンガに出てくる誇張して描かれた骨付き肉を想起させるからだ。私の事務所の代表(日本人)に聞いたら、日本では『はじめ人間ギャートルズ』というアニメによく登場したという。