競技を通して多様性を、馬を通して豊かな情緒を学ぶ

写真左より、西塚心咲さん(15歳/ファナウステーブル所属)&お母様

ご家族で乗馬クラブを運営し、お母様も娘さんも競技に出ている西塚さん親子。

お母様は「馬術は歴史のあるスポーツですが、現代にピッタリのスポーツだと思います」と言います。

手綱で馬を導き障害物を越えていく様は、子どもたちとはいえ勇ましさを感じさせる

「馬術は男女の分け隔てなく、年齢の区別もなく同じ試合に挑むことができるのが特徴です。

LGBTQなど多様性を大切にしている時代だからこそ、馬術を通して子どもが自分らしさや他者の個性を尊重できるようになるのではないでしょうか」

実際、親子で同じ大会に出場し、同じ土俵で競い合っているからこそ、心咲(みさき)さんはお母様のことを「お母さんであり、ライバルでもある」と形容します

そんな彼女には「もうひとりお母さんがいる」のだとか。

チャレンジを恐れないようになった

次の障害物を視野に入れつつ、上手にジャンプができるように歩数を合わせながら馬場を駆け抜けていく

「私の馬のふーちゃんは、私が試合で一瞬ひるんでも、馬が“一緒に頑張ろう!”って勇気をくれることがよくあります。

おかげでチャレンジを恐れないようになった気がします。

まさにふーちゃんはもうひとりのお母さんです」

そう話す心咲さんを見て、お母様は「馬は信頼をすれば愛で応えてくれるし、ライダーに寄り添って支えてくれます。

言葉では伝えたり教えたりするのが難しい愛情や優しさを、馬は子どもに教えてくれます。

馬を通して豊かな情緒を育むことができました」

と馬術をやっていて良かったと改めて話してくれました。

引っ込み思案な性格から積極性が身につき、将来の夢もできた

写真右より、熱田芽依さん(14歳/乗馬クラブクレイン千葉 富津所属)&お母様

家族の中には馬術経験者はおらず、「乗馬クラブ」の体験会をきっかけに馬に乗り始めたという芽依(めい)さん。「馬に出会って私の人生は変わりました」と言います。

もともと学校をお休みしがちだった芽依さん。

お母様が少しでも元気になればとアニマルセラピーの意味を込めて、近所の「乗馬クラブ」の体験会に連れて行ったところ、芽依さんが「習いたい!」と目を輝かせてお願いをしてきたことで、馬術を始めました。

軽々と飛んでいるように見えるが、約500キロの体とライダーを細い脚に乗せて障害物を飛んでいる

「引っ込み思案で、人見知りなので馬術を続けることができるのかなと見守っていたのですが、当時と比べると娘は別人のようです。

今では毎日馬の世話をするために一人で朝早く起き、学校へも毎日通い、学校の後は乗馬クラブに向かい、夜まで練習をしています。

ここまで自立をして、自分から進んで行動できるとは思ってもいませんでした。

それに、体もあまり強くなくて、よく熱を出したり、喘息もあったのですが、今では雨の中で練習しても元気にしているくらいです」

試合が終わると優しい目をする馬だが、試合中はライダー同様真剣な表情だ

馬との出会いをきっかけに学校へ行くのも楽しくなった

芽依さんがなぜそこまで馬術に惹かれたのかと尋ねると「馬の存在がとても癒しでした。

それに1年半前から競技に出るようになったのですが、最初の試合で失敗をしてやめたいとまで思ったのですが、馬だけでなく指導者の方や周りの人のサポートを感じたことも大きかったです」

今の夢は「馬具のデザイナーになること!」という芽依さん。

馬との出会いをきっかけに学校へも行けるようになり、美術の授業時間を通して、大好きな馬とデザインを仕事にしたいとまで考えるようになったと言います。

「娘の人生を豊かにしてくれる馬術に出会えて良かったです」とお母様。

習い事は決して技術を高めるということだけでなく、人生の選択を増やしてくれるものということを、改めて熱田さん親子のお話から学んだように思います。