飛び出すことの大切さ。自分も苦手だからこそ伝えたい

渋谷すばる 撮影:西村彩子

――映画が出来上がって観たときは、台本を読んで楽曲を書いたときの感情とか感想と異なるものを感じたりしましたか?

いや、今回に関しては、台本を読んで想像した通りだったんですよ! もちろん、台本に登場人物のキャラクターイメージや、風景や情景が細かく描かれていたから、そこから自分の中でいろんな景色や登場人物を想像しながら脳内で映像化していってたんですけど、実際に映画になったとき、自分の頭の中で想像したいろんな景色や登場人物がピッタリハマっていたんです!

滝藤さん演じるバージンさんも、渡部さんのモリリンも、前田さんのズブ子も、郡上八幡までの道のりの景色も、郡上八幡の景色も、想像通りだったんです。

それに、監督とお話しさせてもらっていたこともあって、監督の人柄のあたたかさも自然と自分の中で映像の中に落とし込んでいたのか、“自由に生きたらいいやん!”っていう強い熱量の中に、あたたかい優しさがあったんですよね。

映画を観終わったとき、あぁ、ほんまに想像通りのあったかい映画やったな、って思ったんです。自分自身がこの映画に背中を押してもらった様な感じがしたというか。

――「ないしょダンス」を初めて聴いたとき、『ひみつのなっちゃん。』の為に書き下ろされた楽曲だと思えなかったほど、“渋谷すばる”を感じましたからね。すごく胸が痛くなるくらいリアルな“渋谷すばる”でしたから。きっと、そう思った人が多かったと思います。ワードとして出てくる景色も、すごく重なるものがあったと感じたので。

そうかもしれないですね。実際の自分の人生との接地面がすごく多かったから、映画のストーリーと自分の人生が、本当に色濃くリンクしたんだと思うんですよね。

“縮こまったミラーボールから確かに聞こえたんだ 飛び出して来いよ いつでも待ってるぜ”って。聞こえたんです、僕も。本当に違和感なく、自分の中にすんなり入って来た感覚だったんです。

本当に自分のことの様に感じるくらい共感出来たというか。実話をもとにしてるというのは、曲を作ったときは知らなかったけど、自然とそういうところで共鳴したのかもしれないなって。

人ってね、自分の人生なのに、どうしても周りの人の目が気になってしまうと思うんですよ。でもね、実際に飛び出してみたら、意外と1番気にしてるのは自分自身で、周りの人は、両手を挙げてみんながみんな受け入れてくれる訳ではないけど、そこまで突っ撥ねもしないし、自分が気にしてただけ、みたいな感じだったりするんですよね。

――どうしてもそこの一歩が踏み出せなかったりしますからね。勇気が持てないというか。

そう。でもね、ほんの少しだけ勇気を持って、自分の気持ちを大切にして、そこに正直になれたら、その一歩が踏み出せるはずだから。その一歩を踏み出せることが大切なことだから。

って、偉そうなこと言ってるけど、自分もめっちゃ苦手なんですよ、そういうの。いろいろと考え過ぎて、いろんなことが気になって、いろんな人のことが気になって、いろんな人の気持ちを考えたら、やっぱり躊躇してしまう。だからどうしても一歩が踏み出せなくなってしまう。

でも、やってみたらいいやん!って思う。飛び出すことの大切さというか。自分も苦手だからこそ、みんなに伝えたいんやと思う。自分も、そうやって言ってくれたり、背中を押してくれたり、力になってくれる人がおらへんかったら、自分1人では勇気が持てなかったと思うから。

だから俺は、そういう歌を歌ってるのかもしれへんなって思う。今回のいろんな対談とかも、自分1人では出来なかったことやと思う。田中監督とか滝藤賢一さんとかが、是非って言って下さって、お話しして下さる機会を下さったことで、自分だけでは見えなかった景色や感情が見えたというか。

自分を支えてくれているスタッフもそう。自分は喋ることがほんまに苦手やから、自分から率先してこういう場所には出ないんやけど、いろんなことを必死で考えてくれて、渋谷すばるの為にほんまに頑張って動いてくれてるのを見たら、あ、俺が頑張らないとあかんやん!って思わせてくれるというか。

自分としても、歌を歌っているのも、曲を書くのも、自分の好きなことではあるけど、やっぱりそれでみんなを幸せにしたいって思っているから、主題歌という形で今回『ひみつのなっちゃん。』に関わらせて貰ったことで、監督やこの映画を観てくれた人達が幸せな気持ちになってくれることのお手伝いが出来るなら、こんなに幸せなことはないなって、改めて思ったんですよね。

監督や滝藤さんが、「ないしょダンス」をすごく気に入ってくれたっていうのを直接ご本人とお話しさせて貰ったときに聞けたことで、本当に素敵なことやなって思えたんです。