和菓子と洋菓子の食材をコラボさせたパンも

そしてもうひとつ。
和菓子の食材に、洋菓子で使う食材を組合わせたパンが美玲さんの真骨頂。「チーズケーキ&黒豆デニッシュ」(470円)もそのひとつ。

デニッシュ系のチーズケーキを焼くシェフはいるかもしれない。
美玲さんはサクサクの食感のチーズケーキに、やわらかく炊いた黒豆をアクセントに詰めた。

ネーミングだけでは理解不能のパンもある。その筆頭が「冬の罪」(520円)だろうか。
「おいしいすぎて、食べてしまうことからこの名前を命名しました」
自家製ドライリンゴ、赤ワインで煮込んだイチジク、自家製種子島安納蜜芋、栗、クリームチーズをパン生地に詰めて焼いたものだ。

「いろいろなものが入った、食べて愉しいパンを考えました。個性が強い食材をいっしょに味わうことで新しい味が生まれます」
様々な食材を使いこなした、唯一無二のパン
ごまを主役にしたパンを作るとしたら脇役の食材を複数組み合わせることで、主役のごまを光らせる。
パン屋という舞台で美玲さんは、監督として脚本(レシピ)を考えつつ、キャスティング(食材探し)もしながらパンを作っている。
しかも舞台監督の脳裏には、「パンはこういうものでなければいけない」という既成概念がまったくない。
自由な発想でレシピという脚本を書き、キャスティングをしている。
だからなのか、パン屋ではおよそ使わないであろうレモングラスやタイの調味料、ごま油、みりん、オイスターソースなどを使ったパンも焼いている。
それがこの店の最大の特徴といえるだろう。

「きいちご、くるみ、イタリア産マロングラッセ、オレンジ」(470円)も口内調味を愉しめるパンのひとつだ。
爽やかなオレンジ。きいちごの酸味。ホクホクのマロングラッセ。カリカリのくるみ。個性的な食材をパン生地を媒介にしてひとつのパンにまとめ上げている。
齧る位置で味わいが異なるとはいえ、すべての食材を口内調味することでこれまで味わったことがない複雑な味を体験できる。

美玲さんの脳裏には60種類ものレシピがあり、毎日20から30種類のパンを焼いている。
「定番のパンもありますが、四季折々の食材を使ったパンを焼いています」
あれとこれと組み合わせたパンを作りたい。パン生地が発酵するように、頭のなかでアイデアが日々あふれ出ているのだ。
「美玲さんの頭を割ってなかを見てみたい」と言ったら、美玲さんに大笑いされた。
ちなみに。美玲さんといっしょに、和気あいあいとパンを作る人を募集している。

住所/東京都世田谷区上北沢4-34-12
電話/090-6499-0033
営業時間/10:00~売切れまで
定休日/日曜、月曜、火曜、不定休