心に関する勉強をはじめたきっかけ

――ここまで素敵はお話を伺ってきましたが、森さんがこうした心に関する勉強をはじめたきっかけはどんなことがあったのでしょうか?

森夕花さん

森:バブル時代に金融業界で働いていたのですが、みんな浮き足だっている感じがして、少し違和感を持っていました。

仕事が落ち着いてきた時にもっと世界が見たいなと思い、留学を考え、もともと音楽をやっていたのでドイツへの留学を決めました。

今では日本でも「SDGs」が盛んに言われていますが、私が90年代中頃に訪れたドイツのフライブルクでは、当時からものを大切にする暮らしを取り入れていました。

ゴミをきちんと分別してリサイクルしたり、再利用をする生活が当たり前でした。

私は東京で「進んだ」生活をしていると思っていたので、最初ドイツの不便な暮らしを「遅れている」と感じたのですが、実は逆でドイツの方が精神的にずっと進んだ生活をしていたということに気付きました。

人を助けるためにはまず、自分自身の悩みをクリアにする

――90年代は使い捨てが当たり前な時代でしたものね。

森:そうなんですよね。ドイツで暮らした2年間は自分の人生を見直すきっかけになりました。また、その当時ユーゴスラビアで内戦があり、語学学校で難民の方々と出会ったのですが、そこでもたくさん考えることがあったんですね。

そもそも、それまではこの時代に戦争があるということ自体、考えていませんでしたから、自分はすごく無知だったんだと知ることになりました。

日本に帰国してまた同じ様に忙しい日々を送っていたのですが、東ちづるさんがドイツの平和村で、戦争で傷ついた子供たちを癒すという取り組みをされている姿をテレビで観て。

「私はこういうことがしたかったんだ」とものすごく衝撃を受けて。私はこれからの人生、子供たちや困っている方達を助ける活動がしたいと直感的に感じました。

その為にはまず自分自身を知って、自分自身の悩みや苦しみをクリアしていかなければ、人のことを助けるなど出来ない。

そう思ってそこから様々な勉強をはじめました。インド哲学や禅との出会いなどを経て、心に関するお仕事を23年くらいしています。

――「人を助けるためにはまず、自分自身の悩みをクリアにする」というのはなるほどなと思いました。

森:私にその考え方を教えてくれた先生がいるのですが、人の苦しみや深い悲しみと向き合う時、自分自身の悩みや痛みが昇華出来ていないととても苦しくなりますから。

自分の内側から声が聞こえる時がある

――自分の中の悩みってどうしてもモヤモヤ、ずっとつきまとってくるというか。一番向き合うのが難しいですよね。

【マインドフルネス】親子でアート遠足

森:そうなんですよね。私もそうでした。色々なことがこんがらがってしまって、自分が分からなくなった時に、自分の内側から声が聞こえる時があるんですね。

頭の中が悩み事でいっぱいの時ってそういった声が聞こえないんですが、何かを手放した時に聞こえる時がある。

内側から「ただ複雑に絡まっているだけからひとつひとつ解きほぐしなさい」という声が聞こえるんです。

「何が自分の中でこんがらがっているんだろう」と書き出してみると、悩みの根っこが見えてくるんです。

「自分は恥をかくことが嫌なんだ」。するとこんな言葉が浮かんでくるんです。「そんなプライドは捨てて人に聞いてみよう。頼ってみよう」と。

すると悩んでいたことが解決出来る。一つが解決出来ると、糸口が見つかって、二つ三つと悩みが解決出来ることもあります。

もちろん、小さな頃から抱えていた傷であったり、解きほぐすことが難しい悩みもあります。

そういう時は「解決出来るものからしちゃえ!」と。いきなり重い悩みから取り掛かるとイヤになってしまうので。

頑張り屋さんは全部解決して綺麗にしようとするんですけれど、それはなかなか大変です。

軽いものから向き合って、「それでいいんだよ」と自分に許可を与えてあげると、最後に“ラスボス”が出てきます(笑)。

ラスボスといっても、自分の中の恐れは、意外とお化け屋敷の人形のようなもので、自分で想像して作り出してしまっていることがよくあります。

だから、先ほどお話した様なアート表現によって楽しみながら、向き合うのが良いなと思います。

私のセミナーでは複数人でワークをやるので、みんなで話していくうちに「あっ、そうじゃないんだね」って誰かの発言から気付くことが出来るんですよね。

ありのままの自分を認めてあげるのが大事

――「自分に許可を与える」というのはとても素敵な表現ですね。

森:結局、自分の敵って自分なんです。いつも、自分が自分に一番厳しい言葉をかけて、自分の生きるエネルギーを奪ってしまっているんです。

本当は、自分が自分の一番の応援者であってほしい。私も、昔は自分に厳しすぎたし、自分のことが大嫌いだったのですが、今は一番の応援者でいたいと思っています。

誰が何をいうと、どんな失敗をしようと「あなたは素晴らしいんだよ」「次はきっとうまく行くよ」と自分に声をかけてあげる様にしています。

何かが出来たから許可するのではなくて、「今のままで十分じゃん」ということなんですよね。

ありのままの自分を認めてあげる、それは、「あなたはあなたのままでいい」という許可を自分に与えてあげることなんです。

森夕花:カングロ株式会社 取締役執行役員/ライフコーチ/マインドフルネスアート研究家

神奈川県横浜生まれ。尚美高等音楽学院卒業。京都芸術大学芸術学部卒業。1993年、ドイツの環境先進都市フライブルクに留学。自然と調和したライフスタイルを学ぶ。2002年より心と身体を癒すヒーリング・カウンセラーとして活動。2015年から企業のライフコーチとして、個人セッション、研修等を行っている。現在、ライフコーチの他、「大人のためのアート思考講座」「Philoarts研究会」「マインドフルネスアートワークショップ」「サステナ塾」「目覚めの瞑想会」など講座、ワークショップを中心に活動を行っている。

参照リンク:マインドフルネスとウェルビーイング

厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』