「牢獄でシナリオを読むシーン」は2パターン撮影した

竹内涼真 撮影/福岡諒祠(GEKKO)

――力輝斗が牢獄の中で香からの手紙を読んで、不安定になる様子などもありましたが、しんどかったというような大変だったシーンはありましたか?

シナリオを読むところですね。事件の真相を追う香が映画化のために、シナリオを書いた手紙を力輝斗に送ってくるシーンがあるのですが、ここは感情を出して演じるパターンと、こらえるパターンの2パターンを撮影したんです。

結果として感情を出したほうが使われたのですが、最初は感情をしまっていた僕に、内田監督から「もっと解放してみて」と言われて、自分なりに演じてみました。

それは苦しかったというよりは、見方を変えると、力輝斗の心の深層に触れてくれた喜びでもあるというシーンなんです。ただ、ものすごく心の奥にしまっていたものをいきなり掘り起こされたことに驚いていて。

本当に驚いた時は泣かないものだと思うのですが、自分でも嗚咽してしまうとは予測していませんでした。あの感情は、自分では一生懸命気持ちを抑えようとしているのですが、わざと解放しているわけではなく、あふれでてしまったんです。

人間って、笑わないようにしようとすると逆におもしろくなったり、こらえればこらえるほど苦しくなるような時もありますよね。だから、力輝斗の心をこじ開けられそうになるところを必死で閉じようとしたんですよ。

気が重いし、怖い、真実と向き合いたくないからそれならばいっそのこと死刑でいいと言っているという状況に土足で心の奥底まで踏み込んで探られるようなシーンだったので、とても疲弊しました。