へムル・スントゥブ(ソウル・仁寺洞)

『サムスカプサン』のヘムルスントゥブ。つきだしは海苔、白菜キムチ、ズッキーニのナムル、塩辛

外国人旅行者にとって韓国での食事は心浮き立つお楽しみだが、そこで働いている韓国人にとっては、ごく日常的な営みだ。外国人旅行者は高級な店に行ったり、庶民的な店に行ったりするが、韓国人が行く店はだいたいパターンが決まっている。

仁寺洞(インサドン)の西側にあるホテル・アベンツリー・チョンノに向かって右脇の路地を入ると、すぐ右手に見えてくる『サムスカプサン』は、この辺りの企業に勤めている人たちがランチタイムに利用するレストランだ。

特定の料理の専門店ではなく、夜はサムギョプサルやプルコギなどを出す会食用の店だが、ランチタイムはスープとごはんといった軽いメニューを出しているので、旅行者でも利用しやすい。

おすすめは日本でも人気の韓国料理のひとつ、ヘムルスントゥブ。へムルは海産物のこと。

カラス貝やアサリ、イカ、小エビなどがたっぷり入ったスントゥブ(やわらかい豆腐の鍋)のことだ。ごはんにキムチやナムル、塩辛などのおかずが4品ほど付いて6000ウォンは、この立地を考えるとかなり良心的だ。

サムスカプサン
鍾路区堅志洞87-1カヤンビルディング1F TEL:02-725-1069
9:00~21:30 無休

ペクパン(ソウル・鍾路3街)

無名の定食屋さんのペクパン(定食)。これで5000ウォン!

前項の『サムスカプサン』が鍾路(チョンノ)や仁寺洞の会社勤めの人たちのランチスポットだとしたら、こちらは周辺の商売人や鍾路3街(チョンノサムガ)のタプコル公園辺りで暇つぶしするおじいちゃんたち行きつけの大衆食堂だ。

掘っ立て小屋のような建物には看板もなく、食堂にはとても見えないが、恐れることはない。主人であるおばあちゃんとお手伝いのおばさんがおおらかに迎えてくれる。

メニューはペクパン(定食)とラミョン(インスタントラーメン)のみ。ペクパンは、大盛りごはんと汁物(鍋物)に焼き魚、キムチ、ナムルなどが5、6皿も付く。これで5000ウォンとは泣かせる。ソウルを代表する庶民の商業地区、鍾路3街価格。さすがと言うほかはない。

筆者が昨年、名古屋で行なった講座で紹介して以来、すでに何人かの日本人旅行者が訪問し、楽しいレポートをブログに上げてくれている。臆せずに訪ねてもらいたい。

無名の定食屋さん
鍾路3街駅 7番出口の北側の路地
9:00頃~19:00頃 日曜休

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。