わらべうたの魅力とは?

50年の長きにわたって、二葉くすのき保育園では、わらべうたを取り入れた保育を大事にしてきました。

以前は祖母から、そして母から歌いつがれてきたわらべうた。その素朴な響きあやし言葉は、乳幼児にとっては、子守唄であり、ラブソングであり、遊び、さらには学びそのものなのでしょう。

また、わらべうたは赤ちゃんだけのためのものではありません。年齢や成長にあわせたわらべうたがあり、それを通して子どもはたくさんのことを学びます。

遊びのルールや、順番を守る事、協力し合う事、そして判断力や敏捷性が養われます。

酒井さんによると、わらべうたがある環境に身を置いていると、知らず知らずに多くの事を経験し学び取ることができるのだということでした。

園では、年中さん・年長さんくらいになると、自分が赤ちゃんの時に歌ってもらったわらべうたを、赤ちゃんに歌ってあげる光景も見られるそうです。おそらく昔は、どこでも見られた光景だったのかもしれませんが、今はあまり見ないような気がしますね。

赤ちゃんの頃からわらべうたに親しむ環境のあった子どもは、音楽的素養を身につけるというより、コミュニケーションそのものを学んでいるのでしょう。

さらに、わらべうたが好きな子どもは、耳もいいし、覚えもいいのだと酒井さん。

「不思議なのですが、どんなに部屋の中が騒然としていても、わらべうたを歌いだすと、子どもたちが静かになるんです」

大きくて刺激的な音はちまたにあふれていますが、わらべうたのように小さな声は、よく気をつけて聴かないと、聞き洩らしてしまいます。それだけ注意力が養われるのでしょう。

酒井さんからうかがったお話で興味深かったのは、「幼い子どもにとって、言葉はうたうように話され、歌は話すように語られる」というくだりでした。子どもにとって、生活と音楽は別ものではないのですね。

わらべうたはどこで習える?

わらべうたの曲数を酒井さんにお聞きしたところ、「正確にはわかりませんが・・・1000曲以上はあるのでしょうか。日本全国各地のものがありますし、新しいわらべうたも生まれています」とのこと。

酒井さんは、定期的に勉強会に参加して、磨きをかけているそうです。

「そうしないと同じうたばかりになってしまいますし、新しいうたは、歌わないと覚えませんからね」

二葉くすのき保育園では、月に一回、地域交流事業として、保育園に通っていない親子向けに保育園を解放しています。その日は、来園した親子にわらべうたを実際に体験してもらうそうです。

また、近隣の児童館からの要請で、子育て広場でのわらべうた講座などを任されることもあるそうです。多い時は25組の親子が参加し、すぐに覚えて声を出して楽しむ姿が見られるのだとか。

わらべうたの中には、ママ同士の距離を縮める効果のあるものもあるそう。

あるわらべうたでは、赤ちゃんを抱いたママが、部屋の中で移動しながら、別のママをみつけて、「おーちゃをのーみにきてください」と声をかけます。そして声をかけられた方は、「はい、こんにちは」と返し、「いろいろおせわになりました」「はい、さようなら」とこれだけのうたなのですが、これを繰り返すことで、ママたちの表情がほぐれて、笑顔が増えていくのです。

さて、いくつもあるわらべうたから、ひとつ、やり方をご紹介しましょう。

わらべうたの講座で使われる人形と小物

ご紹介するのは、赤ちゃん向けのわらべうたです。

このわらべうたは「唱え」と呼ばれる種類のもので、 決った音はありません。自分の節回しで自由に唱えてください。

1 赤ちゃんと向かい合って、自分の膝に乗せます。

「こーこはとうちゃん、にんどころ」とうたいながら、赤ちゃんの右のほっぺたをやさしく4回つつきます。

2 次は左のほっぺ、その次はおでこ、あごと移動させながら、それぞれ、「こーこはかあちゃん、にんどころ」、「こーこはにいちゃん、にんどころ」、「こーこはばあちゃん、にんどころ」・・とそれぞれ4回ずつやさしくつつきます。

3 最後は、鼻の頭を4回つつきながら、「こーこはねえちゃん、にんどころ」と言って、顔のまわりでぐるぐる手を動かしながら「だいどう、だいどう」と言い、最後に「こちょこちょこちょ~」とあごの下をくすぐります。

だんだん月齢が進んで来れば、赤ちゃんは、最後はこちょこちょが来るぞ、来るぞ~とわかって、くすぐる前から笑い出すようになりますよ。

まとめ

赤ちゃんや子どもに、言葉でなく、うたで愛情を示すことのできるわらべうた。歌詞の意味がわからなくても、やさしい気持ちは伝わります。

古くて新しいわらべうた、孤独な子育てが社会問題になる今だからこそ、日々に取り入れてみてくださいね。

【取材協力】二葉くすのき保育園