“オノマトペ”を使った教え方
オノマトペとは、シャーッ・バキッ・ドドドド、などといった擬音語・擬態語のこと。オノマトペ研究家の藤野良孝さんによると、表現しにくい動きや物事も、理屈や意味でなく、音で一瞬でイメージができることから動作がうまくできるようになり、記憶の定着に役立つそうです。
例えば、跳び箱が跳べるようになるオノマトペ。「助走しなさい、踏み込みなさい、手を付きなさい」ではなく「サー、タン、パッ、トン」と言いながら跳ばせるのです。
【サー】(助走)
【タン】(踏み込み)
【パッ】(手をつく)
【トン】(着地)
逆上がりが出来るようになるオノマトペは、
【ギュッ】(鉄棒をしっかり握る)
【ピタッ】(鉄棒と体を近づける)
【クルン】(回る)
こうすると、身体が自然に動くそうです。
そこで!
ひらがなを書くときにも、次のように声を出しながら書くと、その通り手や指先が動きます。例えば…
- 「つ」…最後を「払う」ではなく、「卵を入れて、シュー」
- 「や」…一筆目を「丸く払う」ではなく、「クルン」
先ほどの「わ」「ね」「れ」の例では最後の部分を
- 「わ」…卵でシュー
- 「ね」…おにぎり、お玉でキュッと結ぶ
- 「れ」…スイカでシュー(または、サンドイッチでシュー)
といったように教えると良いでしょう。
“感情に訴える教え方”も
例えば西暦を覚えるとき、遣唐使が廃止された“894年”では覚えられないので、「(船酔いで)吐くよ、遣唐使廃止」という覚え方もありますね。
人間の脳には長期記憶をする“海馬”があります。一度覚えたものは一旦“短期記憶”に保存されますが、長く記憶しておくには、海馬の横にある“感情をつかさどる扁桃体”を震わせる必要があるそうです。
子どもに文字を教えるときも、単調な記憶に残らない教え方ではなく、感情に働きかける教え方を工夫するとよいですよ。
「きれいに書きなさい」では子どもは意味不明
日常の子育ての中でも親が子どもに注意するとき、次の言葉をかけている人がとても多いです。
「ちゃんとしなさい」
「きちんとしなさい」
「早くしなさい」
でも、年中無休で叱り続けてもなかなか行動が改善しないのは、具体的に行動する手立てが示されず、子どもには分からないからです。
それよりも「元あった場所に片付けよう」とか、「床にあるおもちゃを100数える間に箱の中に入れよう」とか、「この砂時計の砂が落ちるまでの間に着替えましょう」などと伝えた方が断然、わかりやすいです。
これと同じで、文字の練習をさせるときも
「きれいに書きなさい!」
「もっと丁寧に書きなさい!」
「お手本をよ~く見て書きなさい!」
こう言い続けても残念ながら子どもの字はうまくはなりません。具体的な手立てが全く示されていないからです。
前述のように、子どもがイメージしやすい言葉をかけることで、文字をきれいに書くコツが伝わります。
ひらがなは46文字しかありませんが、大人が読む文章でも7割を占めます。「筆順も形もメチャクチャでいい、取り合えず書ければいい」ではなく、一生使うひらがなですし、教え方を工夫して、文字書きが楽しくなるように導きましょうね。
筆者の著書『きれいに書ける ひらがな (おうちレッスン)』ドリルに“魔法の覚え方”を紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。