今の子どもは、生まれた時からスマホやタブレットなどネットにつながるものが身近にある、いわゆる「デジタルネイティブ世代」です。

彼らは、ネット機器の操作方法を覚えるのも早く、中には大人よりも使いこなしている子どもも少なくありません。

でもちょっと待ってください! ネットリテラシーについては、どうでしょうか?

昔の携帯用のゲームは、単にゲームとしての機能しか持っていませんでしたが、今ではカメラがつき、ネットにもつながる、立派な通信機器です。
ウォークマンとiPodでは、音楽が聴けるということ以外はまったく別物と言っていいでしょう。

親が知らないうちに、ゲームや音楽を聴く以外のことをしていても、まったく不思議ではないのです。
それが犯罪につながることも、決して大げさではなく、起こりうることだと、情報教育アナリストの長谷川陽子さんは警鐘を鳴らします。

長谷川さんの著書『ある日突然、普通のママが子どものネットトラブルに青ざめる』(アイエス・エヌ株式会社)をもとに、起こりうる子どものネットトラブルの現状と対策について、学んでいきましょう!

日本のネット環境の現状

日本の子どもがネットトラブルに巻き込まれやすい背景には、大まかに言って4つのことが考えられるそうです。順を追って説明していきます。

1 日本の情報教育の遅れは致命的

まず長谷川さんが日本のネット環境の盲点は、日本の「情報教育」の遅れです。ここでいうのは、「デジタル機器の使い方教育」のことではありません。それだったら、すでに学校教育に導入されています。

まったくといっていいほど、日本の教育に抜け落ちているのは、「どうやったらトラブルに巻き込まれることなく、インターネットやデジタル機器を使いこなせるか」という教育です。

教育の現場から聞こえてくるのは、教師たちの悲鳴です。

こちらの調査では、教諭の約4割弱から、「情報教育の教材が不足」という声が上がっています。自信を持って教えられているという教諭は4割以下でした。

親は親で、大人になってからネットを知ったため、ネットについて、子どもよりも苦手意識がある人が多いようです。

そんな環境のもと、ネットリテラシーを学ぶことなく育った子どもたちが無防備にネットの海で遊んだ結果、なにげない書き込みが炎上したり、友達を失ったりすることにつながることだってあるのです。

2 実際の治安とネットでの治安は比例しない?

いまだに日本は、お財布の入ったバッグを置いたまま、レストランでトイレに立っても大丈夫な国です。ジーパンの後ろポケットに長財布を入れている人も、よく見かけます。

しかし、ネットの世界ではそうのんびりしていられません。ネットに国境はない、と長谷川さんは言います。

世界には治安の悪い国がたくさんありますし、日本では考えられないような犯罪をたくらむ国際的な集団だっています。

ネットは、日本人の価値観がまったく通用しないような悪い人だって、いい人に紛れて当然、混じっている世界なのです。

3 つながっていたい日本人、右にならえの日本人

LINEの「既読スルー」という言葉に象徴されるように、日本人はつねに相手の反応を気にしがち。たいした内容でなくても、返信がないと、あとあとまで気をもんだり、子どもの場合だと、交友関係にまでひびが入りかねません。

たとえば、約束していた相手から、待ち合わせ時間変更の留守番電話が入っていた時、あなたはどうしますか?

アメリカ人はまず折り返したりしないそうです。留守電を聞いて、自分が了解すれば、後は待ち合わせ場所に行けばいい、それのどこがいけないの? という考えなのですね。

日本人なら、相手にどう思われるか心配して、折り返し電話をかけたり、メールの1本は打つところです。そういった性質を持つ日本人が、SNSやネットにはまりやすいというのは、ある意味当然かもしれません。

さらに、ネットで気をつけなくてはいけないことに関しても、みんなが気にしていないから大丈夫、とたかをくくる傾向も、なきにしもあらずではないでしょうか。