もう感情はぐちゃぐちゃです
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
――演じて印象に残ったシーンは?
自分と(坂平陸役の)芳根(京子)ちゃんは、二人の体が入れ替わってから数年経った20代のパートから演じているんですけど、その時点でも、まなみと陸はお互いに相手の体を使っているということで気を遣い合っているんですね。
そんな二人がもしかしたら戻れるかもしれないというチャンスが見えてきて、徐々にお互いの本心がさらけ出されていき、最終的に感情をぶつけ合うシーンはとても印象に残っています。
この作品の中でそこまでの感情をはっきり吐露するような場面は他になくて、そういう意味で大事なシーンだという意識もありました。すごく難しかったですが、自分と芳根ちゃんのお芝居の持っていき方が違っていて、芳根ちゃんの思う陸と、自分が思うまなみのお芝居のぶつけ合いみたいなのが楽しかったです。
あとは、撮影の途中ですっごい雨が降ってきて。撮影が中断になって「雨やむといいね」とか言いながらおしゃべりをしたりして待っていたんですけど、結局、その日は中止になってしまって。
それで後日、途中まで撮っていたところも含めて全部撮り直すことになったんです。自分としても、現場の皆さんも大事なシーンとして捉えていたから、ブーストがかかっていた状態のところを雨に邪魔されて「なんだよ~」っていう気持ちもありましたが、結果的には「やり直せて良かったね」ってなった、思い出のシーンです。
――15年間、相手の体で生きてきて、30歳になって戻れるかもとなったときのまなみの心情はどんなだったと想像していましたか。
もう感情はぐちゃぐちゃですよね。お互いに入れ替わってからの人生を重ねてきていて、人生が2軸あるような感じだったと思うんですけど、さらに元に戻るってなると、それが今の自分にとっていいことなのか、悪いことなのか分からない。だけど決断の時は迫っていて、悩んでいる暇もない、みたいな。入れ替わってから過ごしてきた時間もすごく大事だし、でも戻るときのために頑張って生きてきたところもあるし。
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――二人にとって重要な場所である「異邦人」は、2日で撮影されたと聞きましたが。
作品全体で言えますが、撮っている最中に軸となる感情がいくつもあるから「あれ? ここはどういう感情だったかな?」と考えてしまうこともありました。さっき話したような感情のパーセンテージを細かくチューニングしていくのがすごく難しかった印象があります。
その中でもまなみは「だって自分の体だもん。生まれてきた体だもん」っていう、戻ることへのモチベーションを持っている。だけど、陸がどう思っているのかはわからない。だから、そこを探っていくようなところもありました。
演じていて僕も芳根ちゃんも呼吸が浅くなっていって、カットがかかった瞬間、二人で外の空気を吸いに行ったことを覚えています。やっぱり抱えているものに並々ならぬものがあったんですよね。もう今、思い出すだけで頭が爆発しそうです(苦笑)。
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――まなみを演じていて共感できた部分はありますか。
当たり前だったことが、当たり前ではなくなる瞬間って自分にもあって。アイドルの仕事を始めるようになって、人からの見られ方は変わったと思います。
それまではわりと集団の中でも端っこのほうにいて、みんなが楽しんでいる様子を見て一緒に楽しんでいるような感じだったんですけど、それが(アイドルを始めてから)地元に帰ると、自分のことを宝物のように接してくれるから、それはうれしくもあり、寂しくもあるというか。今はそれが当たり前になっているんだなと思ったことがありました。
あとは家族の間の関係も、仕事とか、いろんな出来事を経て変わるじゃないですか。そういうときに、いろんな気持ちが一気に押し寄せてきて。今の関係性もいいけど、昔を思い出すとちょっと寂しい、でもみんなと話しているこの瞬間は楽しいみたいな。そういう気持ちがマーブル状態になってしまうことは、わかるなと思いました。




























