――今回ピューロランドで男性だけのミュージカルをやることになった経緯はどんなところからですか?
きだ:元々、男性ミュージカルが得意なネルケプランニングさんにピューロランドさんが何かやれないかという話を4年位前からしていて、ようやく実現にこぎつけたのが今回のミュージカルです。
ピューロランドさんのミュージカルで今まで男の子だけっていうのはなかったらしいんですが、ネルケさんが得意とする男の子だけというのを、ピューロランドさんのファンタジーの中にはめ込んでみたらどうかというアイデアがあって、僕の方に話がきました。
――ピューロランドというテーマパークならではの魅力や雰囲気などはありますか?
きだ:すでに劇場の世界観がしっかりあったので、それに合わせるよう脚本を書き直しました。
フェアリーシアターのような実景的に作り込まれた空間で芝居を作ることは僕にとって新しかったし、やりたかったことでもあるので嬉しかったです。
きだ:演劇は「引き算の美学」だと思っていて、映画みたいにセットや道具が全部あることよりは、精査した最低限の美術と役者の肉体で雰囲気を作り、あとはお客さんの想像に委ねるのが美しいなあと。
けれど今回のような作り込まれたセットの場合は、実景としての実在感も当然加味しなければならないので、そのバランスをとるのに少し苦労しました。
この劇場空間では細かい芝居をしてもあまり伝わらないと思い、わかりやすい派手なお芝居と僕達が普段目にするリアルな芝居の中間を意識しました。
キャストには「いつもの気分をキープしつつ、大きな芝居をやってほしい」と言いました。シアター自体の客席数は数百ですけど、気持ちとしては帝国劇場くらいでやってくれと。
これはかなり苦労したと思うんですけど、キャストはすごく頑張ってやってくれました。
真央:一番最初にシアターに入った時に、テーマパークのステージのショーのニオイというのでテンションがあがったのと、客席が劇場と違って世界観の中にあるので、すごい嬉しいけど、ここに立たせていただいて大丈夫なのかな、という不安がありました。
真央:やっぱりお子さんがいる前でお芝居をするってあまりないので、きださんが言うようにわかりやすく見せなきゃいけないっていうのもそうですし、今日まで何十公演もやらせてもらってきて、普通の舞台だったら少しは“慣れ感”というのがあるのかもしれないですけど、この作品は“慣れ感”というのがなくて。
どこで子どもが泣き出すんだろうとか反応が毎日バラバラで、ジェラルドが喋るときに泣くとか、ロベルトがキレるシーンで泣くとかは決まってるんですけど(笑)。
普段僕らの芝居を観に来てくれている方って大体どこで笑って、どこで泣いてとか、なんとなく芝居をしながら感じるんですが、今回はそれがまったくわからない。
急に泣き出したり笑い出したりするので、すごい集中しています。
そういった面で、自分にとってすごく新しいことをやっている気がします。