自分の時代の正しさが2、30年先に正しいかは分からない。教育にも音楽にも言えること
――著書の中のエッセイでは、子育てに対しての葛藤とか逡巡も綴られていて、カリスマとして、神として崇められるほどのTOSHI-LOWさんにも、こんな一面があるのかと印象に残りました。
TOSHI-LOW:カリスマは飽きたのでもう何年も前にやめました(笑)
でも、毎日のようにありますよ、よくない怒り方しちゃった、とか、子どもが「この絵見て!」とか構ってほしがってるのに、今忙しいから後でって言っちゃたりとか。
――そこに、どのように日々折り合いをつけてるんでしょう。
TOSHI-LOW:折合いはつけてないですよ、正しさを求めているわけじゃないから。
ただ、相手に対して邪険な態度を取ると結局自分に刺さっちゃうんですよ。自分が子どもで親父にこんな風にされたらいやだなとか、あー俺こういうこと言っちゃうんだって。
だから、子どもに「ごめん、もう一回さっきのやつ見せて」とか時間作り直したりしてます。
――必要以上に反省したり、折合いはつけたりはないと。
TOSHI-LOW:ニュートラルでいいと思うんですよ、これが正しいっていう教育を今してみたところで、その子が将来幸せになるかもわからない、逆のパターンだってあるだろうし。
子どもの幸せを願ってはいるけど、一世代、二世代も上の人間が正しさなんて分かるわけがないし、20歳も30歳も年下の子たちにとって一番いいものをあげるなんてできないんですよね。
本当はそれを誰もが分かっているはずなのに、自分の時代によかったものを押し付けてしまう、俺が周りの大人にされてイヤだったのは多分それだったんだろうなって思うんです。
でもこれって教育だけじゃなくて、色んなところで起こっている話なんですよね、10年経ったら音楽の在り方もバンドの在り方も変わってくるし。
俺はギターを弾いてアンプを鳴らしてるけど、全部パソコンでっていう人もいるし、俺が若い世代に向かって「そんなのバンドじゃない」なんて言えないわけだし。
だから、あらゆるものが変わっていく中で、時代が変化しても変わらないもの、たとえば自分が好きなものや、やりたいことを探せる力を持っていれば生きていけるんじゃないかって思ってます。
ある意味それは「何でもいいよ」ってことかもしれないですけど。
――その考え方がお弁当にもトレースされてるようにも思いますね、「腐らなければ何でもいいんだよ」って。
TOSHI-LOW:ちょっとくらいなら傷んでても、からだ強くなるんじゃない?って思いますけどね(笑)
――免疫つくかもですね(笑)。ありがとうございました!!
【取材協力】TOSHI-LOW (BRAHMAN/OAU)
1974年茨城県水戸市生まれ。1995年にパンクバンドBRAHMAN 結成。 1996年、初のミニアルバム「Grope Our Way」をリリースし、1999 年にはメジャーデビュー。ライブパフォーマンスが注目を集める。2003 年に女優のりょうと結婚。
2005年にはアコースティックバンド OAU (OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND) としての活動も開始する。東日本大震災以降はさまざまな災害への支援活動を継続して行い、 音楽性以外でも、バンドシーンに大きな影響を与え続けている。
著書『鬼弁~強面パンクロッカーの弁当奮闘記~』がぴあより好評発売中。