2020年の教育改革は目前です。大学入試の改革が主にはなりますが、小学校でも、プログラミング教育が導入されたり、英語が教科化されたり、変化があることは確かです。
さらに、今までは主に認知能力が重要視されていたのが、ここに来て非認知能力への注目が高まっています。
具体的には、教科別・知識詰め込み型の学習よりも、教科の枠を超えた総合的な学びが重視されるようになり、思考力、判断力、表現力を伸ばすことが求められるようになっていきます。
困難に立ち向かう力、レジリエンス(あきらめない、折れない心)なども同様です。
世の中の変化に適応するためには、今までと同じマインドセット(考え方)で子どもを育てていては、効果は望めません。
教科別のエキスパートによる見解が満載の『 親が知っておきたい学びの本質の教科書 教科別編』(ドラゴン桜2×朝日小学生新聞×朝日中高生新聞)を元に、学びの本質をおさえておきましょう!
今までの常識がなくなることも大いにに考えられます。今回はその一例をご紹介します。
英語をモノにするには早期の英語教育という考え
英語教育が花盛りです。
これからの時代を生きることを考えたとき、英語は外せないことは確かです。ですが、まだ日本語もおぼつかない年齢から英語を叩き込むことに、果たして意味はあるのでしょうか。
スタディサプリ英語講師の関正生さんは、はっきり言っています。
「受験英語という観点では不要」
なぜなら、あまり早くから学び始めると、受験まで意欲がもたないからなのだそう。
逆に早いうちから英語に苦手意識が芽生えてしまうと、受験期には英語なんて見たくもない、なんてことになると大変ですよね。
実際に、関さんがこれまで予備校で数えきれないほどの生徒をみてきたなかで、英語が飛びぬけてできる子どもが早期教育を受けていたという例はかなり少ないと言います。
関さんは、受験のための英語勉強は中2からでも間に合う、と言います。ちょっと驚きですね。でも確かに、ちんたら勉強するよりも、限られた時間で集中して勉強するほうが身につくことは確かかも。
中1までは興味を醸成させる時期と考え、英語に対する興味、外国への憧れなどを育んでOKと考えれば、親のストレスも減って一石二鳥です。
さらに、英語というと単語を丸暗記、というイメージがあるかもしれませんが、丸暗記は思考力が育つのを邪魔してしまうため、避けた方がよさそうです。
言葉の意味はひとつとはかぎりません。その文脈のなかでどのように使われるかを全体的にとらえながら、意味を理解していく必要があるのですね。
早いうちからの理系・文系という分類
うちの子は算数や数学が苦手だから文系? と早合点しないでください! 本来であれば、理系・文系といったカテゴリーは、大学で本格的に学問を始めるときに初めて決めるべき問題なのです。
生物学者の福岡伸一さんは、こう言っています。
「小中の頃、算数や数学が苦手だからといって、 理系に向いていないということではない」
特に、福岡さんの専門の生物は、アーティスティックな要素のある学問なのだとか。
たとえば、細胞を研究するとき、細胞を薄切りにして顕微鏡で観察することがあるそうですが、このときに求められるのが、その細胞の断面が角度で切ったものなのかを判断する力です。
この力は、微分積分ができるといった数学的能力ではなく、むしろ石膏デッサンがうまく描けるといった芸術的才能の方に近いといえます。
この一例からもわかるように、算数や数学が苦手、だから理系には向いていないとは一概に言えないことがわかります。
とはいえ今後、理系に進むことを選択肢に入れるのであれば、数学は必須です。数学は積み上げがものを言う教科ですから、小学校の算数からちゃんと知識を積み上げていくことが必須になります。
「算数は、小2が分かれ目」とは数学者の牛瀧文宏さんの弁。
九九を教わる年齢である小2は、計算に慣れ繰り返しやるなかで、暗記する感覚で身につけていくことが求められます。
そうすることで増える「数学の暗黙知」(あらかじめ自分のなかに備わっている暗黙の知識)が、後々の算数・数学を解くセンスに育っていくのだそうです。
トランプの神経衰弱などを一緒にするとわかりますが、このくらい年齢の子どもの暗記力って、すごいものがあります。暗記を苦痛と思わないでこなしていけるこのタイミングを、逃さないようにしたいですね。