普段は出来るのに、出来ないという甘えには?

子どもの甘えには、それまでできていたことができないと言い出したり、「あれやって」「これやって」と要求してくる種類のものもあります。

「すぐに受け入れるのではなく気持ちを受け止めた上で、自分でできるよう促します。

たとえば、甘えてくる子がやる気を持てるような声がけをして、少しでもできたら“すごいねー!”とたくさんほめてあげます。子どもが“自分でできることはかっこいいことなんだ”と思えるといいですね」

最後に話を聞いたもう1人現役保育士のKさんも、子どもの甘えは「自分を見てほしい」というアピールなので、まずは受け止めてあげることが大事と言っていました。

「普段は出来るのに出来ないと甘える場合、その子に何か甘えたくなるきっかけがあったと考えます。

“出来るでしょ”と厳しくしてしまうとかえって甘えがひどくなることが多いので、その場では気を紛らわし、子どもとゆっくり向き合って気持ちが満たされるように意識しています」

とはいえ、1人の子どもだけに関わっていられないこともありますよね。
そんなときはどうしているのでしょうか。

「どうしてもその子だけ見ていられない時は、その子にちゃんと説明します。

納得してくれない場合もありますが 保育はチームプレーなので、そこらへんは他の保育士と協力してという感じですね」

チームプレーという言葉が複数の保育士さんから出てきたことからもわかるように、日本の保育士さんたちの間には、共通認識として子どもの甘えはまず受け止めよう、という想いがあるようですね。

スウェーデンは子どもを甘えさせない?

一方、うらやましいところだらけのスウェーデンの子育て環境ですが、保育に関してはよしざわさんから意外なお話を聞くことができました。

「スウェーデンの保育は保育と教育の分断がない(幼保一体)、個人を尊重するなどの長所があります。

ですが、逆に子どもを自立した個として扱うあまり、子どもに寄り添いが必要なときも突き放しているケースもあります。

たとえば、以前、まだ2歳にならないくらいの年齢の女の子が入園したばかりで環境になじめず、地面に突っ伏して泣いてしまったことがありました。

そのときの他の保育士の対応に驚いたのですが、なにもしないでほっておくんです。“そのうち起き上がるわよ”みたいな感じで。“えー! それはないよ!!“って思いました」

そのとき、よしざわさんはすぐにその子のもとに飛んでいったそうです。

日本の保育が優れている点

では、同じシチュエーションに遭遇したら、どうするかを再び日本の保育士さんのKさんとOさんに聞いてみました。

Kさん「泣いてしまう気持ちを受け止めて、スキンシップを多くとったり、その子の気持ちが落ち着ける環境やおもちゃを探して、情緒の安定をはかります」

Oさん「誰でも初めての場所や人は不安だと思うので、まずは“保育士は怖くない、自分の味方だ”と思ってもらうよう工夫します」

今、目の前にいる子どもを笑顔にすることに持てる力のすべてを注ぐことができる保育士さん。

親でここまですることはなかなか難しいと思ってしまう筆者は、典型的な余裕のない日本の親なのでしょう。

Oさんはさらに、次のように話してくれました。

「また、入園間もない時期は“おうち帰る”“ママ”などと言って、泣いてしまう子がほとんどです。

そのような時は無理に気持ちを切り替えようとせず、“ママに会いたいよね”と気持ちを受け止めた上で気が紛れるよう工夫をしています。3歳児の担任をしていた時には、慣れるまで1ヶ月以上かかった子がいましたよ」