“テイクアウト予約が取れる店”と“取れない店”、違いは?
大木 本当にそうですね。ところで、すっかり在宅で体が引き締まった牧元さん、地方とかはどうなっているんですか?
牧元 地方に関してはほぼ東京と同じですね。知り合いのシェフとしか話してないですけども。東京と同じように、休まれているところもあれば、昼に営業しつつテイクアウトをやってるところもあれば。中には通販をやられているところもあるし。というような感じですよね。それは特に東京と変わりはないですね。
大木 通販の動きも広がってますよね。
牧元 通販するためには、各地区の保健所の許可が必要となります。それには厨房の改造も必要になる場合もあります。それを積極的に取りに行っているお店と、諦めているお店もあるようです。どうしようか、って考えているところに分かれていますね。
『mondo』なんかはついにこの前、惣菜免許を取りました。宮木シェフはもう1月くらいから準備を始めてたから。また『Renge』の西岡シェフはこの機会に、惣菜免許の他に、乳製品販売免許なども取得されています。
小石原 その段階で見越してたってことですか?
牧元 見越していたようです。 mondoの宮木シェフが偉いのは、そのためにウーバーイーツで毎日賄いを取って、研究したらしいですよ。
一同 おお~。
牧元 要するに、テイクアウトも通販も、片手間ではなくてどれだけ本気になってやるか、相手を絞ってやれるかっていうところで全く違って来るわけですね。ビジネスですから。もちろん、料理が美味しいことは絶対条件ですが、それ以前にいろんなことがあるんですよね。
今でもSNSをあまり活用していない人と、活用している人に分かれますが、やはり有名店じゃなくてもこの状態になると、SNSを活用して、「いいね」がいっぱい付いて、テイクアウトの注文が山ほど来ている店がありますしね。
大木 やたら売り切れてる店とかありますもんね。
浅妻 すでにもう、テイクアウトも予約の取れる店と取れない店、みたいな差ができていていますよね。
牧元 上手くいってるところはすごく上手ですよ。ウェブページに「フォロワー接触テイクアウト」っていうコピーを書いて。甲府の店なんですけどね。店の外にQRコードを大きく掲げて話題になって店の外にQRコードを大きく掲げて話題になって。このQRコードで見るとこの店に行って、キャッシュレス決済でテイクアウトができるようになる、みたいな。
大木 すごい。中国みたいだな。
牧元 そうです。
小石原 コロナビールの広告が貼ってあるのが面白い。
牧元 あとは、コロナビール飲み放題、とか。くだらないようですけれども。1時間いっぱい、何の条件もなくコロナの飲み放題をやっている店も。ここもソーシャルディスタンスを取ってますけども、めちゃくちゃ流行っているらしいです。
要するに、SNSでブレイクするとテレビの取材が来るんですよ。それでさらにブレイクするんですよね。だから、今だけの視点で言うと、そういう商売のやり方をやられている人がなんとか生き延びてますよね。
『クリスチアノ』や『おそうざいと煎餅もんじゃ さとう』のオーナー、佐藤幸二さんなんかも早かったですね。ただテイクアウトを始めるのではなく、ちゃんと面白い文章を書いてポスティングをして。しかも配達用にバイクも購入したそうです。バイクでデリバリーもする、みたいな。
“子供スパイスカレー計画”という10種類のカレーも作っていますね。1個食べたけども、めちゃくちゃ美味い。辛くないだけで香り豊かで。
小石原 大人用の辛みペーストが別添えなのがさすがですよね。
牧元 そうそう。そういう風に、実店舗と同じように客のくすぐり方が上手い人はいいなと思うんです。だから、真空パック1つ取っても、家での再現性がどれだけあるのか、っていうのもノウハウとして必要になってくると思うんですよね。
この間、『チプーン』の冷凍ヴィーガンラーメンっていうのをいただきましてですね。
小石原 ああ! あれは傑作。
牧元 めちゃくちゃ美味いんですよ。
森脇 美味しかったですね。
小石原 担々麺のスープが、山椒のきかせ方や完飲しても罪悪感のないスッキリ仕上げでさすがです。
牧元 担々麺も美味しかったけど、僕はもう1つの方がすごく気になって。
小石原 ああ、シンプルなノーマルラーメンですね。
大木 ヴィーガンヌードル。Rengeの西岡シェフですよね。野菜だけであのコクが出るなんて驚きました。
牧元 あれは、素晴らしい。冷凍麺かあ。どうなのよ、と思っていたけど、完璧なんですよね。
小石原 最初は同じように思いました。
牧元 なんども試行錯誤をしてやられているんでしょうね。今まで作ってきたものをそのまま真空パックにしたのでは、競争に勝てない。そう思いますね。
イタリア料理店のテイクアウトも買いましたが、mondoが特によかった。アイディアと試作を重ねて。普段は店で出してないものも、家庭でどういうものが好まれるだろうか、って考え、練られて作られている感じがしました。
大木 通販は、麺が難しいですよね。
牧元 そう、ショートパスタでも、家でチンすると、どうしても固くなってしまう。乾麺とパスタソースが別々で購入できると、家でも再現性が高いですが、人によっては、ちょっとめんどくさいと考える人もいる。
小石原 乾麺売りは推奨したいな、と私も思ってます。お店で使っている乾麺をソースと別に販売してくれると。ひと手間はかかるけれど作りたてが食べられる上に、店の味に近づけるから。
松浦 目白の『トレガッティ』はパスタソースも含めて全品レトルトで、輸入パスタの乾麺を別売していましたね。そういえば、生麺を打ってた日もあったけど、あれどうするんだろう(笑)。さっき挙げたラ・ブリアンツァはそのまま食べられるゆで麺スタイルと乾麺が選べますよね。
浅妻 乾麺売りは、スーパーで売り切れの時にもありがたいですね。個人的にはソースだけ買いたい派です。結局、それぞれの生活スタイルによると思うのですが、子供がいたり、家族が一斉に食べたりというシーンのある立場からすると、一度に二人分のソースは欲しいわけです。
『オルランド』は量もたっぷり、味も相当レベルが高い。というか、店に近いところまでいけます。
牧元 ソースと麺も一緒なんですか?
浅妻 本はソースのみの真空パックです。家にある乾麺を茹でます。麺を茹でることって、主婦的には別にめんどうくさいことではないので。ソースに火を1回入れられるので、衛生的にも安心感があります。
すりおろしたパルミジャーノチーズが小さな容器で添えてあり、気が利いていますよ。まとめ買いで冷凍もできる。アレンジも含めて自由度が高く、本当に便利でしたね。
松浦 パスタソースで展開できるイタリアンはテイクアウト向きですよね。パスタをちゃんと茹でれば、店の味にかなり近づけられますし。
浅妻 お店もパスタソースが一番利益を上げられるのかな、と。
牧元 そうですよね。あと、Rengeのコースっていうのも僕食べたんですよ。あれ、チンするだけですよ。チンして袋開けてそのまま食べられるというのが、これはすごいなと思った。
浅妻 画期的ですよね。
小石原 私のオーダーした日はメインがタカアシガニ塩卵の麻婆豆腐だったんですけど、確かにあれがレンチンで仕上がってしまう、というのは、今までにない感じですよね。
大木 西岡シェフは元々そういう探求が好きな人ですもんね。でもあのコースセット、何が素晴らしいって、家でシェフ気分を味わえることですよ。どの皿をどの順序で出そうかとか、考えるだけで楽しくなる。そういえば、『サローネグループ』の麺も美味しかったですよ。
小石原 あ、あれ頼みたいんですよね。
大木 浅草開化楼と樋口シェフで開発したカラヒグ麺はね、すごく美味しい。
小石原 あれは冷凍で来るんですか?
大木 そうです、冷凍で来て冷蔵保存ですね。
小石原 生麺とソース。