旬香亭

緊急事態宣言のあと、ご存知のようにほぼすべての飲食店が危機に瀕しています。

東京の飲食店を20年に渡ってガイドしてきた書籍『東京最高のレストラン』としては、実際今何が起きているのか、どうすればいいのか? そのリアルな生の声をお伝えすべく、浅妻千映子さん、小石原はるかさん、松浦達也さん、マッキー牧元さん、森脇慶子さんを迎えて、名物の座談会を急遽、開催しました。

テイクアウト情報からこれからの在り方まで、話題は盛りだくさんです。今後の過ごし方、楽しみ方の参考になれば幸いです。

*この座談会は2020年5月5日にZoomで行われました。最新の情報は各店舗までご確認ください。

フォトギャラリー座談会登場レストランメニュー画像【ギャラリー】
  • kamenote
  • kamenote
  • ルコック
  • ルコック
  • マノア

お店を続けられるかどうか、厳しい「家賃」の問題

大木 今回わかりましたよね、やっぱり馴染みの店に買いに行っちゃう、っていう。敢えて新しいところに行く、というよりは。

小石原 まあ、人情ですよね。同じ協力するなら知ってるところに、っていう気持ちはつい働いてしまいます。

浅妻 そう思います。ご無沙汰していた店に買いに行って、久々に顔を出せる機会にもなった。

大木 一方で、従業員を切るのか切らないのか、みたいなこともあるじゃないですか。『ロッツオ・シチリア』の阿部さんとかはね、人気のない業態だからこそ、ここで人を切ってはいけない、ということを強く言っているし。

そうは言っても、なかなか大変ですよね。でも某有名イタリアンで求人したら、普段は月に2,3人しか応募がないのに60人来たらしいですけどね。

牧元 ある大手外食グループは、一旦、失業保険をもらえるように全員解雇したみたいですけどね。

松浦 それも一つの誠実さですよね。考え方にもよりますが、特に当初は収束に何か月かかるかわからないという悲観論も強かったですし。

牧元 そうなの。

松浦 今回、助成や融資がずいぶん後手に回った印象もあるじゃないですか。仕組みはたくさんあっても、現場で突っぱねられたり、書式がわざとかというくらいわかりにくかったり。申請しても満額通らないどころか、申請額の5%くらいしか下りない、という例もあったみたいですよ。

小石原 5%?

松浦 はい。つなぎ融資で1000万円分を申請したのに、認められたのは40~50万という話を耳にしました。

小石原 うーん。

牧元 助成金もだから、下手すると6月になるじゃないですか。それまで持たない、っていうお店が山ほどあるんですね。

ゼットンを創業した稲本さんとかが、外食産業の声として政府に上げてるのが、家賃払いモラトリアム法っていうのを成立させようっていう。だから、不動産オーナーに飲食店からの交渉に応じることを義務化する、とか、家賃の減免交渉に必ず応じること、とか。

松浦 施設内ならともかく個人店が大家に減額交渉するのはなかなか難しいですよね。大家は大家で苦しいだろうし、国や政府が方針を出してくれないと持たなくなる店は山ほどありますよね。

牧元 福岡市は家賃の8割を負担することを決めたんですよ。福岡市長が。

松浦 国が出し渋ってるのを見かねて、各自治体がやり始めるケースが出始めましたよね。それこそ福岡は、飲食店が街を構成する重要な要素だということをすごくわかっているんだなあ、とちょっぴりジーンと来ました。

浅妻 東京中心部の家賃は本当に高いから。なかなか大変ですよね。

牧元 大手不動産でも家賃をものすごい減額にしたり、ゼロにしている会社がある。一方で全く応じない大手も。

松浦 施設側の都合で閉鎖されて、満額払えと言われたら、いずれ店子は逃げますよね。

牧元 逃げますよ。新しいビルが建っても絶対その噂は飲食店に広まっているから、入らないですよ。あるいは今後、そういう付帯条件を付けるとかね。

松浦 店によっては、すでにそういう交渉をされているかもしれませんね。

“テイクアウトをやりにくいメニュー”って?

大木 そういえば、大御所のレストランでも6月までずれ込むなら閉店するという話も。

牧元 個人的には有楽町の『レバンテ』と中野『ブリック』がなくなったのがショックです。

森脇 知り合いのお蕎麦屋さんも6月まで続いたら廃業を考えるって言ってましたね。

大木 テイクアウトとかやってないんですか?

森脇 やっていないみたいです。お蕎麦ってテイクアウトは難しいと思いますよ。自分で茹で上げなきゃいけないから。あんまり「買って帰ろう」みたいな感じはないみたいですね。

大木 年越しそば状態ですね。

森脇 年越しそばみたいに、自分で茹でようっていう人がいればいいですけど。蕎麦を茹でるの難しそう、って思っちゃうんじゃないですか。特に十割の蕎麦だと自分じゃ茹でられないんじゃないかって。

牧元 蕎麦前セットって売ってくれればいいのにね。例えば、“天抜き”みたいな感じで、天ぷらはチンして、おつゆは別のパックに入っていて、これとこれを入れてくださいってね。そうすると楽しいじゃないですか。

三つ葉は他のパックに入っていて。かまぼことかも真空パックに入っていてワサビもつければ。焼き海苔なんかも簡単に真空パックでできるじゃないですか。

大木 欲しい!

森脇 卵焼きとかはいいですよね。

牧元 卵焼きね、いいよね。それをやったら。

森脇 『菊谷』さんは頑張って売ってましたね。近くならぶっかけセットとか容器に入れて、近所の人は持って帰って食べられる、みたいな。

松浦 確かに、お蕎麦屋さんは今回のような非常時に新しい取り組みに積極的な印象がありませんよね。

ラーメン店などは自家製麺と冷凍スープのセットを新たに売ろうという店が、すでに山ほどあります。『饗 くろ喜』は冷凍麺とスープのセット通販も始めました。そもそも最近のラーメン店にはイノベーティブなメニューも多いので、新しい取り組みに向いているのかもしれません。

大木 『麵屋武蔵』なんて、つけ麺の通販を始めて、さらに各店舗でホットドッグとかサンドイッチも売ってますからね。

浅妻 卵焼きはね、大きく焼いて売ったらいいですよね。あの、神楽坂の『山さき』さんのところの卵焼きはすごく美味しかったし。お蕎麦屋さんでも折にバーンと入れて売れば。そこそこの値段でも買いそうな気がする。送れるという利点も。

山さき
山さき

松浦 卵焼き、ほしいなあ。確かに人にも差し上げられるし、自宅用にもほしい。