人気店のパン職人も参加! パン好き垂涎のプログラム

「せっかくなので、有機栽培で育てることにしたんです。でも、私達には農業の知識がないので、専門家に指導していただくことにしました」

ひとりは、「恵泉女学園大学人間社会学部」の澤登早苗教授。有機栽培を実践しつつ、その栽培方法を生徒に伝えてきた。

もうひとりは、ジョン・ムーアさん。元パタゴニア日本支社長で、現在、「一般社団法人シーズ・オブ ・ライフ」の代表理事として未来へ種子をつなぐ活動を続けている。

「種種」の初回の、種まきの日、ジョンさんは、高知県で長年育ててきた種を持参した。その種にはとくに品種がなかったことから、いつしかみんなが「ジョンさんの小麦」と呼ぶようになった。

「このワークショップには僕のような消費者だけでなく、有名なパン職人も参加しています」

左から「ブラフベーカリー」(横浜市)の栄徳剛シェフ、「365日」(渋谷区)の杉窪章匡シェフ、「カタネベーカリー」(渋谷区)の片根大輔シェフの3名

実際小麦を育ててみてわかったことは、「農業は大変だということだった」と池田さんは告白する。

「そもそも種まきからしてしんどいですよ。腰をかがめ、背中を丸めて種をまくのはとてもハード(苦笑)。

でも、みんな愉しそうでした。ふつう働いたら疲れますが、『種種』はリフレッシュするんですよ(笑)」

誰もがいきいきとした表情をしているのが、「種種」の特徴かもしれない。

そんな中で気づかされたことがある、と池田さんは振り返る。

「小麦栽培は食と密接につながっています。誰かが日常的にやってくれないと大好きなパンを食べられません。このワークショップを経験し、そのことに改めて気づかされました」

「種種」の魅力は、小麦の栽培を通じて農業を勉強できることだけではない。毎回パン職人が持ってきてくれる自慢のパンを、ピクニック気分で食べられるのだ。

しかもそのパンを作ったパン職人から、直接パンの話を聞くことができる。

「僕は全国のパン屋を回っていますが、パン職人と大自然の中で話をしながら、彼らが焼いたパンを食べられるなんて機会はめったにありません」