── どの業界よりも早く、ほとんど全面的に活動自粛をし、かつその困難な状況を積極的に訴えたにもかかわらず、正直言って政府のエンタテインメントや文化に対する態度は冷たいものだと感じました。そこはいかがですか?
野村 特定の業界に対して補償をするわけにはいかない、というのが最終的な政府の回答でした。
そして「不要不急」の最初にくるのがエンタテインメントだった、というこの国の態度がはっきりと示されましたよね。
これはよく引き合いに出されますけど、ドイツのメルケル首相や文化相の声明が、心に響くものとして多くの人々に受け入れられたし、実際に表現に携わる人たちの勇気となりました。
文化というものに対する考え方の違いがヨーロッパと日本とでは如実に違うものだということが鮮明になりましたよね。
エンタテインメントが当たり前にある日常は、素晴らしい
── そうした国の態度が鮮明化したからこそ、こちら側(エンタテインメント側)としての課題も浮き彫りになったという側面もありますよね?
野村 そうですね。やっぱりエンタテインメントというものが当たり前にある日常は素晴らしいんだよ、必要なんだよ、ということをちゃんと主張していかなければいけないんだなと思いました。
それと、政府に対するロビー活動をこれまで積極的に行ってきたわけではなかったんですよね、我々の業界は。
そういったこともある程度は必要だなと改めて思いましたし、アーティストやエンタテインメントに関わる人それぞれが政治を身近に感じて、それについて思ったことを発言する大切さというのも今回の新型コロナウイルスをきっかけに変わっていくのではないでしょうか。
やっぱり、星野源さんの『うちで踊ろう』に首相が乗っかったあの動画が象徴的な気がするんですけど、やっぱりエンタテインメントの理解のされ方って、この国の政府にとってはそんなものでしかないんだなと、みんなが思ったはずなんです、あれを見て。
だからあれほどの反発があったわけで。そうやって意識が政治に向くことで、選挙に行く人が増えたりして、結果、エンタテインメントや文化の向上のために一人一人が行動しているということにつながっていくような気がしていますね。
── 実際に「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッター上での投稿が拡散したのも、多くの芸能人や著名人の方々の賛同がきっかけとなりました。
野村 今まではアーティストやタレントに対して事務所が政治的な発言などを控えるように言う、という暗黙のルールみたいなものがあったんですよね。
でも今回のことでそこの意識が違ってきているような気がしますね。
── 4/7に政府が緊急事態宣言を発表し、4/16に全国に拡大、「STAY HOME」という言葉とともに、自粛期間へ突入します。
その期間がエンタテインメントの重要性を多くの人に認識させたように思います。
野村 やっぱり衣食住が足りてるという状態だけで人間的な生活の喜びが満たされるのかと言えば、そうではなくて、そこには喜んだり楽しんだり、場合によっては悲しんだりということがあって初めて人間らしい生活ができるんだということが今回の自粛期間で証明されたんじゃないかなという気がしています。
── 本当にそうですね。では、最終回となる次回は、ポスト・コロナ時代のエンタテインメント、ライブエンタテインメントの今後についてお聞きします。