世代を超えた人気声優の“仕事論”
―― 皆さんが好きな、これは笑ったな~というコメディ作品ってありますか?
大塚:僕がこれまで一番笑ったのは『少林サッカー』(2002)。あれはもうダメでしたね、ゲラゲラ笑いました。
水島:僕は『ローマで起こった奇妙な出来事』という、映画にもなったブロードウェイミュージカルが大好きです。あと、アンジャッシュのネタは大好きです。
小野:最近笑ったのは漫画の『中間管理録トネガワ』です。
水島&大塚:えっ、“トネガワ”ってあの『カイジ』の?
小野:その利根川のスピンオフなのですが、日常の些細なことをあのテンションで解説するんですね。お昼ご飯のメニューについてだったり部下の扱い方について「圧倒的敗北・・・!」とか「想定内・・・」というテンションで(笑)。すごく面白いのでオススメです。
―― 水島さんと大塚さん、そして小野さんは世代が違うと思うのですが、先輩のおふたりから、小野さんの活躍をどう見られていますか?
大塚:僕が賢章君の年齢の時なんて全然ダメでしたね。僕が27歳の頃ってちょうど声の仕事をはじめたくらいかな。賢章君は腕も良いし、腹もすわってるしね、何も教えることないくらい。
小野:いえいえいえ!
大塚:こういう人がいてくれれば、声優界も安泰なんじゃないかな?
水島:僕の27歳の頃は、バリバリアイドルやっていた思い出すと恥ずかしい時代ですね(笑)。
僕が賢章のことをすごいと思うのは、僕も児童演劇出身で、例えば坂上忍君や斉藤こず恵ちゃんが3歳の頃から知っているんだけど、子役がそのまま成長してちゃんと大人になるのってすごく難しいと言われてて。
でも賢章は初めて会った時からちゃんと大人の演技をしていたし、「子役から脱却するのに苦労した」という感じが全くしなかったんだ。
小野:子供の頃から舞台で大人と混ざってお芝居させていただいていたのと、自分のことを客観的に見る癖があるので、そういう伸び悩みを感じることはなかったですね。
―― 今こうして何回か舞台を共にして、第一印象から変わった所はありますか?
大塚:あんまり変わらないかな。嘘つくのが下手なんだと思う。初対面でも取り繕わないんだろうね。
小野:……はい。嘘下手です、すぐバレます(笑)。
水島:僕が賢章に初めて会ったのって、前々回の「ラフィングライブ公演」だったのだけど、僕の息子役だったのね。それで、礼儀正しいけれど自分からグッと来るタイプではかった気がする。慣れてからはどんどん話してくれる様になったけど(笑)。
一回ビックリしたのが、稽古場に1時間だけ来たことがあるんです。前の仕事が終わったあとに品川の稽古場に駆けつけて、1時間だけ稽古して、2時間後にはシンガポールへ旅立っていった。僕だったら知らん顔してそのまま羽田空港行って飯でも食っちゃう。そういうところも本当にすごいなと思っています。
―― 小野さんから見た、水島さんと大塚さんはいかがでしょうか。
小野:裕さんの第一印象は、初めて会ったのが「ラフィングライブ」を立ち上げたばかりですごく気合が入っていた時で、「こいつ大丈夫なのか?」っていう視線を感じたんですね(笑)。
大塚:(笑)。
水島:そんなんだった?! ヤバイな~(笑)。
小野:でもそこからの心の開き方が裕さんはすごく早くて、すぐに仲良くなれました。
明夫さんは渋くて格好良い役を多くやられていて、大人の男性のイメージだったんですが、すごくお茶目で。
大塚:こいつバカだな、って思ったんじゃない?(笑)
小野:そんなことないです(笑)。先ほど明夫さんが「俺くらいの年齢になったら飛び道具の役がウケる様になるんだよ」とおっしゃっていましたが、そうやって年齢を重ねたからこそできることってうらやましいんです。ズルいなと思って(笑)。とりあえずはやく30代になりたいな、という気持ちが大きくて。
水島:でも逆に今しかできない役もあるでしょ? 年は自然にとっちゃうんだから、そんなに早く大人になっていかなくても良いと思うけどなあ。
大塚:あとは20代でサボると30代にツケが、30代でサボると40代にツケがきちゃうんだよな。僕なんかもう50代後半ですけど、今サボったら60代の時に仕事なくなるぞっていう危機感がある。
水島:それはそうだね、役者は自分が努力していなければ仕事が無くなってしまうから。
小野:本当にそうですね。アニメのお仕事も、毎クール就活している様なものですから。