いま、“きみに幸あれ”と伝えること―「UNPOSTED LETTER」
ある意味、SMAPは20世紀最後の年、この「世紀末」で辞世の曲を語り終えていたのかもしれない。
21世紀のある時期から、SMAPのいくつかの曲は、手紙のような色彩を獲得していく。
手紙という距離感。手紙というタイムラグ。手紙という間接表現。
いまにして思えば、それらの曲はすべて、SMAPからわたしたちへの手紙に思える。
そのときはわからなくても、後になってわかる。手紙には、そんな言葉が埋めこまれているものだが、そんな時間差で届く何かがある。
過去から、いまに届く何か。
「UNPOSTED LETTER」(2003年。アルバム『SMAP 016 / MIJ』収録)は、その名の通り、全編が手紙形式で展開する。
かつての恋人から結婚の知らせが届いた。その返信。タイトルに明らかだが、結局投函しなかった手紙の文面である。
いくつかの季節をめぐったせいで、いまなら、あの頃より、きみのことがわかる。あの頃、きみに話した夢に向かって、自分なりに歩いている。あの頃より、性格も穏やかになった気もする。でも、あの頃にもし、なんて考えないようにしている。
そんな、心情吐露を交えながら、この度のこと、おめでとうございます、と告げるまでの歌。
胸を張ってエールを送りたい。そんな明確なあいさつのかたわらに、かたちにしづらい気持ちが綴られている。
見えないけど、消えてもいない、妙な距離が気持ちいい。
いつも思い出すわけでも、忘れ去ってしまうわけでもない。
相手のことをそんな存在だと、手紙の主は記し、最後に、きみに幸あれ、と文を終える。
わたしは、この曲が、SMAPという彼方から届いた手紙に思えてならない。
そして、思う。これは、わたしたちの気持ちを代弁している曲でもあるのではないか。
つまり、SMAPからわたしたちへの手紙であると同時に、わたしたちからSMAPへの手紙。
別れの歌でもなければ、再会の歌でもない。
それだけに、きみに幸あれ、という言葉が沁みる。
わたしたちは、いま、SMAPに、きみに幸あれ、と言えるだろうか。
難しいことかもしれないけれど、わたしはできれば、そう伝えたい。
きみに幸あれ。