わたしたちが過ごした時間への“賛美歌”―「Still U」
いくつかの季節をめぐったせいで、わかることは本当にあると思う。
特に、2016年という信じられないような1年を経験した後だからこそ、わかることはきっとある。
解釈が変わった曲がある。大好きで、とにかく大好きで、何度も何度も何度も繰り返し聴いてきた曲なのに。
「Still U」(2008年。アルバム『super.modern.artistic.performance』収録)。
リリース当初は、そして、その後、2015年までは、あえてラブソングの体裁をとりながら、SMAPがSMAP自身の絆を歌った曲だと捉えていた。
もちろん、SMAP最良の「自己批評ソング」だという認識はいまも根底では変わらない。
基本的には英語詞。それだけに、わずかな日本語が耳に残る。
みんなに別れるかもしれないと言われたけど。一緒にやってきたのは事実。
SMAP解散の噂は、これまで何度もあった。2008年前後にもあった。だから、これはそのことに対するSMAPからのアンサーソングなのだと思った。
遠い道を一緒に耐え抜いた。お互いの手を離さない。終わるまで変わらない。
耐え抜いた遠い道。森且行が不在となってからの道が、このフレーズに重なると思った。SMAPはそんなふうに、一緒にやってきたのだと。
だが、たとえば、次のように、言葉を組み替えるなら、違った像も浮かび上がってる。
お互いの手を離さずに一緒にやってきた。その事実は終わるまで変わらない。
これは、SMAPとわたしたちの関係について歌っているのではないか。
“終わり”を覚悟するからこそ歌えた、“肯定”のメッセージ
一緒にやってきた事実は変わらない。
わたしたちは、SMAPと一緒にやってきた。一緒の時代に生き、手を離さずにやってきた。その事実は終わるまで変わらなかった。
つまり、これは、SMAPが、わたしたちを肯定している歌なのだと思う。
それがいつになるのかはわからないが、SMAPはいつか「終わる」ことを覚悟していた。
だからこそ。
一緒にやってきたのは事実。終わるまで変わらない。
そう歌ったのだ。
SMAPは「時間」を歌う。時代へのエールも、日常の肯定も、すべて「時間」を大切にする行為だ。そして、「Still U」は、SMAPとわたしたちのあいだに流れていた「時間」に対する、この上ない賛美だ。
賛美歌は、英語でこんなことを伝えている。
この狂った世界で、すべてが変わっていっても、きみだけは、絶対変わってはいけない。
そして。
春、夏、秋、冬。雨や雷が降り注ぐ中でも。きみとぼく。ぼくときみ。ふたりっきり接着剤みたいにくっついて、タトゥーみたいに永遠の仲。
中居正広を。木村拓哉を。稲垣吾郎を。草彅剛を。香取慎吾を。SMAPを。心の底から誇りに思える歌だ。
一緒にやってきたのは事実。
だから、おそれることなく、わたしたちも、わたしたちとSMAPの「時間」に誇りを持つべきなのだと思う。