「短い髪」「好きよ」、そしてSMAPからのラストメッセージ
「UNPOSTED LETTER」を手がけた麻生哲朗には「短い髪」（2010年。アルバム『We are SMAP!』収録）という名曲もある。
ここでは、死者への手紙＝メッセージが綴られている。
恋人に先立たれた主人公は、きみの分まで生きようとか思わないようにしてる、と不在の相手に伝える。
そして、こう続ける。
心の奥に穴があるということは、きみがそこにいるということ。
SMAPは不在を肯定する。穴を肯定する。
ぽっかり空いたその部分をどうしたらいいか。
この曲はその処方箋だ。
「好きよ」（2014年。アルバム『Mr.S』収録）は、シングル曲「愛が止まるまでは」なども提供している川谷絵音による珠玉の作。
全編、女性目線で綴られるこの曲は、恋文。おそらく投函されなかった恋文だ。
手を伸ばした瞬間、また届かなくなってしまうあなた。だから、せめて、好きよ、と夢の中で伝えさせて、という心情は、まさにわたしたちの想いを、SMAPが歌っているに等しい。
さて、SMAPからのラストメッセージは、どの曲になるのだろう。
あくまでもリリース順で考えると、「分け合う夢 引き上げろ またやろうぜ」という宣言がファンファーレのように鳴り響く「Otherside」や、デビュー曲「Can’t Stop!! -LOVING-」とタイトルで韻を踏んでいる「愛が止まるまでは」（自分のために生きて、結果誰かのためになった、それだけのことなんだ、悪くはないだろう、という述懐もある）、そして「夜明け」という意味の「Breaking Dawn」（3曲とも2015年）、どれにもその可能性はある。
だが、イレギュラーなかたちではあるが、「10th Anniversary SMAP SHOP！」（2015年）がそれに相当する。
10年目となったSMAP SHOPのみで発売されたCDだが、いわゆる歌ではなく、メンバーそれぞれの言葉を、「華麗なる逆襲」（2015年）のリミックスも手がけたtofubeatsがサンプリングして、サウンドデザインした楽曲だ。
SMAPが店員として突然来訪することでも話題を呼んだSMAP SHOP。この曲でメンバーが口にするのは基本的に「いらっしゃいませ」から「ありがとうございました」までの、店員としての感謝の言葉。
特に「ありがとうございました」という過去形は繰り返される。
SMAPは、スジを通していたと思う。わたしたちに「ありがとうございました」と伝えているから。
余談だが、前年までのSMAP SHOPには唯一来ていなかった中居正広が、2015年12月31日に訪れ、先に来ていた木村拓哉と共にカウンターに立った。
木村がレジを打ち、中居は袋づめをしたという。
それは、SMAPが解散するちょうど1年前のことだった。
このCDの中で、木村は「ほんとにみなさんのおかげです」と言っている。
そして中居は「I AM YOU」（わたしはあなたです）という言葉を残している。
連載＜SMAP is ALIVE―SMAPは生きている＞
第1回：【SMAP】PVから見えてくる、“5人からの隠れたメッセージ”
第2回：俳優・木村拓哉、キャリア最良の演技!? ドラマ『A LIFE』で見せた“名シーン”
第3回：ハンパない！『嘘の戦争』の演技に見る「草彅剛にしかできないこと」
第4回：メンバー5人のラジオから受け取る、“変わらない日常”の尊さ
第5回：【中居正広】生放送でより輝く、MCを超えた魅力とは？『ミになる図書館』～『スマステ』を見て
