中村倫也 撮影/高橋那月

地に足のついた歩みをするしかないってことがもうわかっている

中村倫也といえば、ステイホームの期間中、「中村さんちの自宅から」「動物を飼ったらやりたいこと」など、ゆる〜い動画の数々をアップし、重苦しい世の中の空気に癒しをもたらした。

まさに「表に立つ中村倫也」の影響力が強く感じられたが、こちらに関しても本人はいたって力んだところはない。

「自分の立場とか影響力とか、それによって左右されるものがありがたいことに年とともに増えてはきていますけど、それとは関係のないところでああいうことをやってみようという発想は昔から変わっていないというか。

よく幼なじみにも言われるんですよ、変わらないねって。だから、たとえ僕が今のように世の中から知られていなかったとしても、あの状況になったら同じように遊んでいたんじゃないですか、きっと」

中村倫也の言葉には、人を惹きつける力がある。それは、鼓膜を撫でるような美声によるものだけではない。高校のときから哲学好きで、自分とは何か考えることも多かったという。

日の目を見ない頃も、スポットライトの中心に立つ今も、変わらずに常に思索し続けることで濾過された人間性が、彼の言葉を特別なものにしている。だから、最後に聞いてみた。中村倫也は、そんな自分自身のことが好きですかと。

「嫌いではないですね。自分に対して『なんやの?』と思うときももちろんあるし、あきらめていることもいっぱいありますけど、どうしたって自分にはこの2本の足しかないから、それで歩くしかないみたいな感じで。

ないものはないんだから、そういう地に足のついた歩みをするしかないってことがもうわかっている。年々思考がシンプルになっているんで、楽っちゃ楽ですよ」

掴みどころがないようで、実はすごくわかりやすいような。だけど、そう易々と手の内におさまってくれない気もする。この短いインタビューで見せてくれた一面も、中村倫也の中にある様々な自分のほんの切れ端でしかないんだろう。

簡単に知ったような気持ちになったら大間違い。でも、だから、もっと知りたくなる。私たちは、中村倫也から目が離せなくなってしまうのだ。

『水曜日が消えた』
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中村倫也 撮影/高橋那月